State Champs “Japan Tour 2025” with The BONEZ 下北沢シャングリラ ライブレポート

遡ること約半年前の昨年9月、僕はNO PRESSURE/Regulateのジャパンツアー、かつ、The BONEZが帯同するライブに参加をし、そのレポートを書いた。

 

ICE GRILL$ & The BONEZ presents NO PRESSURE with REGULATE JAPAN TOUR 横浜ベイホール ライブレポート

 

その最後の方に、ICE GRILL$側も、またThe BONEZと一緒に来年も何か起こる予感がしている、と書いたが、これは実際、ICE GRILL$がXに書いていたことである。

 

 

そのため、一個人としても、またこのタッグが企画する面白いものを見たいと思っていたが、まさか、それが1年も経たずに起こるとは思わなかった。

そしてまさか、あの、State Champsを呼んでくるとは、夢にも思わなかった。

 

知らない方にお伝えをすると、State Champsはアメリカ、アップステート・ニューヨーク出身のポップパンクバンドであり、本国でも人気を誇るのはもちろんのこと、他の様々な国でも人気を誇るバンドであり、普通に数千人規模が入る箱でも埋められる程のバンドである。
そのため、逆に言えば、日本のこのキャパシティは、海外から見れば信じられないと思うかもしれない。

だからこそ、バンド側との物理的な距離の近さはもちろんのこと、熱量も近いがゆえにダイレクトに伝わるのは当然のこと、ステージダイブといった遊びも出来るというのは、他の国のファンからすれば垂涎ものかもしれない。

そしてそこに、日本からThe BONEZがサポートアクトとしてしっかりサポートするのだから、素晴らしいライブになるのは、もうこの2バンドの名前がラインナップされた瞬間から確信していた。

 

ただ、今回The BONEZがサポートする理由は、前のツアーがきっかけになったから、というわけではなく、実は昨年のNO PRESSURE/Regulateのツアーが企画される前から、今回のツアーを計画していたという裏話を、SNSでThe BONEZのメンバーやICE GRILL$は発信していた。
ともすれば、昨年のツアーより前から計画をしていたとなれば、今回のライブツアーの開催を実現するために、1年以上の時間をかけたのはもちろんのこと、場合によっては、2年近い時間をかけて、開催までこぎ着けたと言っても過言ではないかもしれない。

それほどまでに長い時間をかけて企画し、ついに訪れた、日米の熱いライブをする2組のバンドによる東名阪ツアー。その記念すべき3夜目であり、The BONEZがサポートする最後の夜となった、下北沢シャングリラのライブをレポートしていく。

先行を務めたのは、もちろんサポートアクトということもあってThe BONEZだが、しかし、これは参加した方全員納得することであるとは思うが、この日の参加者のTシャツの8割は、The BONEZのTシャツを占めていると言っても過言ではなかった。
故に、サポートアクトといいつつも、The BONEZのいつもの日本でのライブが繰り広げられることとなった。

 

Beastie BoysのSabotageをSEに登場するという、2025年仕様のスタイルで登場し、中央に集まると、点取られても、取り返す!We are The BONEZ!と、ファンからしてもお馴染みとなった光景からスタートするが、サークルピット!とのっけから煽れば、フロア中央に巨大なサークルピットが生まれ、The BONEZきってのサークルピット曲であるZenithからのスタートという、これまであまりないスタートに驚かされた。

セキュリティに上がってきたいやつは上がらせろ、わかってるからと、ダイバーをキャッチし、そのダイバーをステージに上がらせまいとするセキュリティに対し、ボーカルのJESSE(以下、敬称略とさせていただきます)は声を掛けると、その言葉のすぐ後に自身がギターを抱えたままダイブをする。
開始数分ではあるが、フロアの興奮度合も1曲目からマックスだ。

だが、カッコ悪いやつは飛んでくんなと、ステージダイブする客に対しそう制すが、カッコイイやつお前ら嫌いだろ?お前ら全員カッコイイから飛んでこいや!と、フロアを信じているからこその言葉をかけ、Place of Fireに突入すれば、もうフロアのタガが外れたと言わんばかりに、次々ステージダイブをしていく。

 

思えば、こうしてThe BONEZがステージダイブのような、セキュリティにキャッチして戻されるではなく、ダイブしたら自分で戻れ、カッコイイダイブステージからしてみろという、荒っぽいノリ・ステージとフロアの距離0のようなライブの光景が生まれたのは、間違いなく、冒頭紹介したNO PRESSURE/Regulateとのツアーがキッカケだ。

そこから約7ヶ月ほど経ち、自身としてもまさにこの日以来のThe BONEZとなったわけだが、これは率直な感想にはなるが、ステージダイブが、上手くなっている印象を受けた。

無論、ステージダイブなんてどこかで習うものではないため、上手くなるなら一重に慣れしかないはずだが、とはいえそういうことが出来る機会がThe BONEZのライブで常にあるかというと、決して多くはない。
だが、ほぼ全員が、ちゃんと背中を下に向けた、背面跳びのようにステージからダイブをする人がこの日は多かった印象があり、間違いなく、この半年で、ステージダイブのやり方が浸透したのだろう。

 

State Champsと今回3本ライブを回ったが、仲良くなりすぎたと、国を越えた友情が出来たことを喜びつつ、日本だと対バンとかで出るバンドのライブが終わった後にメインのバンドがライブをする時に、その前に出てたバンドが袖で見てるっていうことがあるが、海外ではそれはあまりない光景なのだと言い、だからこそ、海外にこの日本のやばさを見せつけてやろうぜと口にすると、The BONEZきってのパーティーソングであり、12年前の初ライブからずっと演奏し続けてきたGIMCRACKでパーティーを再開する。

ギターを置き、ハンドマイクにJESSEが持ち替えると、俺ら上がっちゃってるからと、バンド側のテンションもMAXになっていることを伝えるかのようにRusted Car・LOUDERとプレイすれば、フロアもぐちゃぐちゃ。かつ、曲中ではJESSEだけでなく、ギターのKOKIもステージダイブを決めており、上がっちゃってる、ということを、バンド側も体で表現していく。

 

そのフロアの熱を感じながら、ずっと聞いていたバンドと一緒にライブ出来るのは最高だと、ベースのT$UYO$HIがMCでそう語った後、ただ、日本のバンドが、っていうより、俺らと、俺らのオーディエンスがやばいのを見せつけてやろうぜと、前々から言っていた、The BONEZとファンであるBONERの一体感を見せつけてやろうぜという言葉で焚き付けると、フロアからは歓声が上がる。

その流れに続きJESSEが再びマイクを取ると、皆のこと置き去りにしていい?と、英語でState Champsに向けて話しかける。
内容としては、ざっくりとにはなるが、State Champsのメンバー・クルー一同への感謝と、全員愛してるよという優しい言葉から、俺らのファンはBONERというのだが、ここにいる全員仲間と思ってくれていい。といったニュアンスの言葉を口にすると、袖で見ていたState ChampsのベースであるRyanが飛び出し、ありがとうございますと、覚えたばかりであろう日本語で感謝を口にし、歓声と拍手が上がる。これだけでも、The BONEZとState Champsが仲良くなりすぎたというのが、否が応でも伝わってくることだろう。

 

死にたいと思うことも多い中で、お前ら今日まで生きててくれてありがとう。寿命伸ばしに来たぜと口にし、その気持ちを歌にしたかのようなエモーショナルな空気感漂うThat Songから、ZAXのドラムから始まるThread & Needleでは、イントロ中、日本の色んなとこで火事が起きて、能登半島はまだ復興してない中で、俺らこうしてられるの贅沢だと思わない?と語りかけ、贅沢だと感じたら、でかい声で歌えと言えば、コーラス部分を全員が大合唱する、だけでなく、サビの直前、明日どうなるかなんてわかんないだろ。だから生きてんのが面白いんだよと口にし、マイクから離れれば、フロア中がサビを歌っていく。
少し前に、JESSEの喉の病気により3本のライブで歌えなくなった時に、出演をキャンセルするのではなく、演奏はするが、BONERに歌わせるということをさせていたが、バンド側にとってもそれがいい感触や手応えとなったのか、普段のライブでも歌わせるようになったのかもしれないが、そうすることにより、フロアの一体感が更に増したように感じた。

 

最後のSUNTOWNの直前、The BONEZではなく、まだJESSE and The BONEZだった頃、初ライブをしたのがこの下北沢だったため、その12年前の初ライブのことを口にした。
その時、このバンドが生まれる経緯となった、Pay money To my PainのボーカルのKが死んだという発表がされた翌日にライブがあり、ライブも打ち上げも全く楽しくなかった。けど、やってきて今日ここまで面白いことできてるから、マイナスなことを抱えてるBONERに向け、俺らを見ろ。寿命減ってもお前らの寿命伸ばすためにやるからと宣言した後、誰かの靴を発見し、その靴の持ち主に手渡した後、靴履くまでやんねえからと言い、当初はテンションが上がっていたファンだったが、履くまでずっと履け!とJESSEに言われ、ようやく履いた後に改めてスタートする。誰一人置いていかないと、前々からThe BONEZは語っていたが、それを今でも体現しているこのバンドは、やはり変わらない。

その最後に、俺らのこと知らねえとか関係ねえよ、ICE GRILL$と一緒にやることで、知らない国のやつと友達になれたと、一緒にライブが出来た喜び以上に、新しい友達が出来たことを破顔しながら語るJESSEの顔に、この3本はまたThe BONEZにとってのターニングポイントとなったことだろうと思いつつ、後のState Champsに熱いバトンを手渡した。

 

また、今日この日だが、海外からのお客さんも少なからずいた。おそらく、というか十中八九State Champs目当てだったとは思うが、笑顔で見ていたため、そういった方々にも間違いなく届いたと信じたい。

 

ちなみに立ってリフトする人、さすがにライブハウスの天井に張り巡らされている梁やケーブル等に手を掛けるのは、ライブハウスの何かしらを壊す可能性も十二分にありえ、本当にそれが起きた際にThe BONEZ側にも迷惑かけるし、カッコ悪い客と見なされてしまうため、個人的には本当にやめた方がいいと思う。

 

ライブが終わり、一度ステージ上にカーテンが引かれて閉めきられる。そうしてセッティングの様子を隠したままの中、アメリカのポップスやロックがフロアに流れる中、しばらくするとセッティングが終わり、カーテンが袖に引かれ、再びステージが露となり、いよいよという期待感と共に、客電が落ちる。

 

荘厳なSEと共にメンバーが次々登場し、ボーカルのDerekが最後に登場し、Come On!を連発し、最新アルバムであり、セルフタイトルアルバムであるState ChampsのSilver Cloudからライブが始まる。

先程ベースのRyanは一度ステージに上がり、かつ、SNSでも度々The BONEZメンバーとの写真が上がっていたため、仲良いのは傍から見てもわかっていたが、とはいえ写真に写っていない他のメンバーはどうなんだろうと個人的には思っていたが、ギターのTylerはこの日、JESSEがやっているお店であるJESSE’S SHOP & FACTORYのTシャツを着ていた。これだけでもう、全てが杞憂だというのがひと目でわかった。

 

Losing MyselfではDerekの煽りもあるが、自然発生的にモッシュピットも生まれ、ダイブも増えていく。
その中で今回のState Champsの日本限定販売のTシャツを着てダイブする人がおり、その人がDerekに腕を掴まれ上げられたと思ったら、なんと先程まで熱演を繰り広げていたJESSEであり、ステージからのダイブではなく、フロアから飛んでくるというまさかの展開に上がらざるを得ない。

更にMine Is Gold・Outta My Headと立て続けにくるのだから、モッシュやダイブだけでなく、本国同様にシンガロングもする。このあまりの熱気に、State Champsメンバーも興奮や楽しさが表情から伝わってくるだけでなく、Derekはアドレナリンが出まくっているからなのか、真っ赤な顔をしながら歌う姿がとても印象的だった。

 

Tokyo!と呼びかけ、パーティーを始めようというニュアンスのMCから、Light Blueではサビの部分ではシンガロングが巻き起こった後、パイプオルガンのような音が響いたと思うと、サークルピットと指示し、中央にサークルが出来れば、ウォールオブデスならぬ、サークルオブデスが起こったCriminal。ジャンプを立て続けに煽るCluelessから、全員が縦ノリをするHell Of Itと、曲ごとに異なる遊び方や楽しみ方が生まれる。
無論、メロディが良いのはもちろんだが、彼らの楽曲は非常にキャッチーであり、かつ、初見であったとしても、ボーカルのDerekがマイクをこちらに向けるため、ここで歌うんだとなるため、こちらとしても非常にシンガロングしやすいのが特徴だ。
もちろん、かねてから聞いていた人でこの日を待ってたという人や、この日のために聞き込んだという人も多くいるとは思うが、どの楽曲でも、フロアにいる多くの人が一緒に歌う様は本国さながらであり、The BONEZのライブとはまた違う一体感がある。

 

Tokyo!ありがとうございますと、ベースのRyanが、覚えたであろう日本語で想いを伝えた後、Derekがこれまで俺達は5枚のアルバムをリリースしており、過去から今までのものまでやるという旨の発言で期待させ、2013年リリースのアルバムであるThe Finer ThingsからRemedy・Easy Enoughと立て続けに披露するが、Remedyでは演奏していたものの、どうやら機材トラブルが起こっていたようであったため、また次来日してくれた際には、パーフェクトなRemedyを見たいと思う。

 

再びのMCでは、本日招聘してくれたICE GRILL$への感謝を口にしつつ、今日初めてState Champsのライブを見る人は?と尋ねると、多くの人が手を挙げる。それを見て、ようこそ俺達のファミリーへと、State Champsファミリーにここの全員を迎え入れると、State Champsの1曲目と、最新アルバムの1曲目であるThe Constantから再開し、再びの盛り上がりを見せる。
だが、始まる前までは肌感覚だったが、どうにもイマイチ全員ピンときていなかったような気がしたのだが、おそらくそれは、State Champsとしての1曲目なのか、最新アルバムの1曲目なのかがわからなかったためだと思う。

 

Tokyo!時間だという旨のMCから、All You Are Is Historyのイントロを歌い出せば全員一様に手を挙げ、シンガロングもしつつ、後方で見ていた人も我慢出来なくなったのか、ジャケットを着ている人も次々とピットに飛び込んでいき、Save Face Storyでは、Slopeがゲストとして歌うパートがあるが、サプライズでJESSEがその部分をカバーするという、世界広しといえど、ここでしか見れない・成しえないサプライズの後、State Champsメンバー一人一人とハグしあい帰っていくJESSEの姿に改めて、カッコイイバンドであれば、人種国境関係なく、友達になれるんだという姿を見せられた。

そして、イントロが鳴った瞬間から歓声が上がり、立て続けにステージダイブが生まれたElevatedから、ラストにはメロウなサウンドが特徴的なEverybody but Youで、本編を終えた。

 

しかしまだ帰れないと言わんばかりにアンコールを求めると、まだ家に帰りたくないやつは誰だ!といった旨のMCと共にアンコールに応えると、ラストには皆待ってました!と言わんばかりに、イントロから歓声が上がったSecretsでは、ダイブだけでなく、この日唯一となるウォールオブデスも巻き起こった。
最後、また次の機会に!と、またの再会を約束するMCと共にステージを去る・・・かと思いきや、去りたくないのはState Champsも同様のようで、今日のセットリストやピック、ドラムスティックなど、メンバーだけでなくスタッフまでもが、まるで湯水のようにステージから次々と色々なものを渡していくという大盤振る舞いで、去る最後の一秒まで、我々を楽しませてくれた。

 

実は僕自身、State Champsを数年前から聞いており、友人にも好きなんだよねと伝えていた。そのため、聞いているリスナーとして当然だが、次来日するとなったら、その際はぜひともライブを見たいと思っていた。

そんな中ついに待望の再来日、かつ、The BONEZがサポートアクトとして3公演も務めるという、想像以上の来日ツアーに、これは間違いないと思っていたが、やはりその感覚は間違っていなかった。

そして、State Champsも、今回の来日ツアーでより日本を好きになってくれたと信じているため、次の来日は6年(コロナ禍を抜けば約3年ほどにはなるが)と間を空けずに、ぜひともまた早い段階で来日をしてほしいのはもちろん、The BONEZとまた共演をしてほしいと、切に願う。
もっと言えば、この記事をアップした4月17日には、ツアーの最終公演を代官山UNITで行っており、そちらには日本のポップパンクのニューホープであるGood Grief・SEE YOU SMILEが出演をしており、この2組もまたState Champsと共演をしてほしい。なんなら、今回出たバンド全てで回るツアーなんかがあったら、もっととんでもないことになるため、万に一かもしれないが、そんな未来も期待をしたい。

 

更にそれだけでなく、ICE GRILL$もここから快進撃と言わんばかりに来日ツアーを多く控えており、5月にはあのLagwagonのツアーが決まっており、その対バンには、dustboxやTOTALFATと、ICE GRILL$とこれまで関わりがなかった、フェスにも多く出演しているベテランパンクバンドだけでなく、ついに日本のパンク界の親玉とでも言うべき、Ken Yokoyamaの出演までもが決まっている。
これまで、新進気鋭の若手バンドがメインだった中で、ついに誰もが知るバンドもがICE GRILL$のツアーに出るようになった中で、ICE GRILL$が次にどんな面白いことを考えているのか。いやもしかすれば、もう水面下では誰かと交渉しているのかもしれない。

だからこそ、State Champs・The BONEZだけでなく、これまでもそうだったが、ICE GRILL$のこれからの動きにも変わらず注目をしていきたい。