Crystal Lake『HELIX ONEMAN JAPAN TOUR 2019 SEASON 2』長野J ライブ レポート

去年、日本のメタルコアシーンに燦然と輝く大傑作の1枚『HELIX』をリリースし、今年はアメリカのメタルコアの代表的バンド『AUGUST BURNS RED』のツアーに同じく海外のメタルコアバンドである『Fit For A King』・『Miss May I』と共に2ヶ月アメリカ中を周り、さらに6月にはイギリスで開催される世界最大級のフェスであり、今年の3月に日本でも開催され記憶にも新しい『Download Festival』に出演するなど、今年はとにかく海外でライブをすることが多くなった『Crystal Lake』。

そのCrystal Lakeが、今年初頭に行われたHELIXのアルバムツアー。

そのSeason 2として、前回は東名阪で行われていたものを全国で、かつ前回行われたツアーよりも小さいキャパシティのライブハウスで行っている。

今回、そのツアーの後半戦であり、かつギターのShinyaの地元である長野のライブハウス、『長野J』で行われたツアーに参加してきた。

このライブが終わった後に感じたことは、なぜこのバンドが今世界から引っ張りだこなのかということと、もはや日本のバンドの域を越えている。という2点だった。

会場の空気を完全に1つにさせ、バイオレンスでありながらもピースフルな空間を生み出す彼らのポテンシャルをこれでもかいうほどに見せつけられたライブをレポートしていく。

開演時間から10分程度遅れ、客電が落とされると荘厳かつ近未来的なサウンドのSEとともにメンバーが登場すると、今回のアルバム『HELIX』の中の1曲、Hail to the fireからスタートし、1曲目からジャンプとシンガロング、そしてサークルピットが自然と生まれていく。

その後にはアルバムCUBESから、あまりライブで披露されることが少なかったMahakala、最新アルバムHELIXからは外国から日本へ国際電話をかけるときに使う番号である+81をタイトルに落とし込んだ1曲をプレイし、新旧入り混ぜたセットリストで序盤から会場の熱気をグングンと上げていく。

彼らのサウンドはメタルコアを基調としているが、HELIXでは海外のヒップホップの要素も取り込み、暴れるだけでなく縦ノリも上手く取り入れ、暴れるだけでない楽しみ方を出来るなど、彼らの武器がまた1つ増えたと感じた。

その後に、電子音声でセリフが流れると会場が大いに沸く。
HELIXのアルバムの1曲目のHELIXだ。

そしてそのまま、アルバム通りAeonに繋がっていく。
メタルコアを通り越し、デスコアに近いサウンドの本楽曲で会場は一瞬にしてモッシュの嵐になる。

Aeonのあとはさらにアルバム通り、Agonyに繋げる。

獣のようにグロウルをし、客席に向けてマイクを向け自由にプレイするボーカルのRyoだけでなく、ギターのYDとShinya、そしてサポートベースである元キバオブアキバのみつるもまた、ヘッドバンキングや上手や下手に移動しつつも、機械のごとく精密な演奏をしていく。

そしてそれを支えるドラムのGakuのヘビーかつ超がつくほどのテクニカルなドラミングも合わせ全てが一体となり、音楽を浴びてはいるがそのサウンドも相まってかまるで機械仕掛けの神=デウスエクスマキナが降臨し、その降臨を称え、我々が求めているかのようだった。

 

・・・と、ここまで書くととても硬派なバンドに思えてしまうのだろうが、曲が終わると長い長い、かつ何やってんだこの方々・・・?え、Crystal Lakeってこんなだっけ・・・?と思えるMCが始まった。

まずここは、先程も記したがギターのShinyaの故郷であり、ボーカルのRyoからせっかくだからMCどうぞと振られると、普段はあまり見られないShinyaのMCが始まった。

元々長野Jは違う場所にあり、Shinyaが高校生だった頃にはゲームセンターであり、よく溜まっていた場所がまさか帰ってみたらライブハウスになるとは・・・と驚いていた。

そしてここでギターのYDが近くのライブハウスである長野CLUB JUNK BOXでShinyaがライブを見に行った時に起こった話をしだす。

ある東京のハードコアバンドがそこにライブをしに来た時にShinyaが足を運んだら、東京で人気だからもう超楽しみにしてたら、まさかのShinya含め客が5人しかいなかった・・・とここまで話をしたところで、なんで俺が話してんの?となり、その当事者であるShinyaに話を戻す。

そしてShinyaがその当時のことを思い出しながら話し始め、5人しかいなくてそのバンドがブチ切れて、雪の中来たのにこれかよって言い、そのライブが終わった後物販に行ったらそのバンドのステッカーを100枚くれたという嬉しいんだか悲しいんだか分からない、複雑な当時のことを笑いながら話す。

そしてそんな当時の事がありながら、こうして自分のバンドでこんなにたくさんの人が来てくれたことに感謝をしていた。

そしてその後、最近になってMCを覚えたサポートベースのみつるにMCが渡ると、ここからがまた酷かった。

みつるです。とその直前に真似をしたYDの口調をそのまま真似すると、直前のYDから面白い話してとハードルを上げられ、かつツアーに複数回来ている方も多くおり、話をせずここ最近の定番になっているという、スタッフが持ってきたワインを一気飲みすることに。

また、その際にみーつーる、ハイ!というコールアンドレスポンスもお願いすることに。
(ちなみにそのワインの名前を読む時、英語だったのだがその発音は見事にカタカタ英語だった。)

そのワインが麦茶じゃないということを証明するために客席にそれを渡し確認させていると、その持ったファンの1人の名前を聞くと『みのる』と答えた。

そしたらそのまま、なんとそのみのるという方が開けて飲み始め、かつみつるに名前が似ているということもあってかみーのーる、ハイ!というコールアンドレスポンスが繰り広げられることに。

しばらくして手元にワインが戻ってきたら、結構な量が減っており、そのままそれを飲むことに。
その際、自分で飲みながら自分でみつると言うことになり、結局飲みながらなので途中で言えなくなっていたがそこはファンが見事にコールアンドレスポンスをした。

さらに触発され、YDもまた、飲んでいたビールを一気飲みすることに。
もちろんここでもYD、ハイ!というコールアンドレスポンスが起きていたのは言うまでもない。

そしてそのやたら体感時間の長いMC?が終わった後、Ryoが今一番ひとつになってる気がすると言い、このままの空気でいこうか!と言った後ライブの定番曲であるMercuryをプレイ。

Ryoに向けて次々とダイバーが飛んでいき、我先にとマイクを奪いにいこうとする姿にオールドスクールなハードコアのライブのノリを感じた。

再びMCに入ると、Ryoがこの中で今公開されているアベンジャーズ/エンドゲームを見た人どんだけいる?と問う。
なお、ここで手を挙げた人数は現状過去最高だったそうだ。

そのアベンジャーズ/エンドゲーム、ひいてはマーベルユニバースをずっと見続けてきたRyoはグッときたと同時に、走馬灯のようにこれまでの事を思い出したという。
(ちなみにYDも見に行ったそうだがよく分からなかったそう。)

このCrystal Lakeも17年活動してきて、Ryoが加入してから8年が経ち、その間に色々な人からお前らには出来ない、無理だ。と言われてきたそうだ。

しかし今回のアベンジャーズ/エンドゲームでもあった、数億分の1%の可能性を信じてやってきた。
だからお前らも1歩でも前に進んでみ。やってみなきゃわかんないからと、自分たちのここまでの歩みを振り返り、なにかに挑戦しようとしてる人の背中を押すような言葉を送った。

Crystal Lake自身、ここ数年でグッと知名度が上がったが、それまでに様々な出来事があり、オリジナルメンバーもギターのYDとShinyaの2人だけとなった。

また、Crystal Lakeはメタルコアと呼ばれているが、元来ハードコアのバンドだ。
そのハードコア界隈で日本はもちろん、海外からも人気になるというのはとても難しいことであり、実際にそう言ってくる人も少なくはなかったはずだ。

だからこそ、その全てを覆し、ここまでの位置に来たCrystal Lakeの、Ryoの言葉にはとてつもない説得力があった。

それは次の曲である、Light Up The Channelでも表していた。

この曲はアルバムには一切収録されておらず、2014年にタワーレコード限定で発売されたNOISEMAKER・Survive Said The Prophet・wrong city、そしてCrystal Lakeの4バンドのスプリットアルバムに収録されていた楽曲だ。

また、このスプリットアルバムの発売に合わせこの4バンドでツアーを行っていた。
そのツアーのファイナルは恵比寿リキッドルームだったが、今でこそこのラインナップならソールドアウト間違いなしだが、当時はどのバンドも知名度が低く、かなり無謀な挑戦のように思えた。

だからこそ、1歩でも前に進んでみ、というRyoの言葉の通り、この曲もまた、悔しい思いをしつつもそうやって1歩1歩踏み出してきた中で振り返った時に絶対に必要な1曲なのだろうと考えると、今回の選曲は妥当だと思えた。

メロディアスかつ神聖な雰囲気を感じさせるDevilcryの後、祈りの時間だとRyoが言い、全員で手で円を作り、一種の宗教の如く、祈りを捧げつつ神聖な雰囲気の中に狂気も感じられるThe Circle、イントロから拳をあげウォーウォーウォーというシンガロングが自然と巻き起こり、今日一のダイブとステージダイブが発生したThe Fire Inside、Crystal Lakeが世界から注目されるきっかけとなったApolloと、代表曲が連発されていく。

最後はアルバムの最後の曲であり、大事なもの・信じるものをを守るための歌であるSanctuaryをプレイし本編が終了する。

しかしすぐにアンコールを求める声や、Crystal Lakeコールが巻き起こりかなり早々に戻りアンコールが始まった。

そしてShinyaが再び口を開き、今回のツアーではやらないと決めてたけど、思い入れがありかつ自分の故郷だから特別にやると言い、今ツアー初披露のPrometheusをプレイする。

そして最後にRyoが、今回は当日券を含めソールドアウトしたけれど、次長野に来る時は即日ソールドアウトにしよう!と新たな目標を立て、彼らなりのメロコアという今作でも1番に速い曲であるLost In Foreverで体力残して帰るなと言わんばかりに完全燃焼させていく。

最後は全員で長野ということでShinya!というかけ声で記念撮影をし、数週間後に行われるCUBES・THE SIGNのアルバム再現ライブ・10月に行われる主催フェスTRUE NORTH FESTIVALの告知をし、ライブは終了した。

 

今回のツアーでも各地ソールドアウトが多発している等、彼らの人気はここ数年本当にうなぎ登りであり、その人気は今や日本を飛び越え海外に飛び火し、海外からも求められることが多くなっている。

事実、5月が終わった後、6月から1ヶ月程海外でライブを行い、8月からはまた1ヶ月半海外で向こうのバンドのツアーサポートとして各地を巡っていくという、とてつもなくタイトなスケジュールでライブを行っていく。

現状でも十二分に完成され、日本のヘビーミュージック代表と言っても過言ではないこのバンドが今年日本を飛び出し世界各地でライブを行う。

その先に生まれるものは何か。そしてCrystal Lakeが今後どこまで我々を面白い場所に連れていってくれるのか、今から楽しみでしょうがない。