信州・チノの乱 BRAHMAN×Ken Yokoyama×The Birthday レポート

合戦というより、ヒーロー大集合だった。
例えるならば、ウルトラマンと仮面ライダーとゴレンジャーがいっぺんに出揃う。そんなイベントだった。

毎年、キョードー北陸の廣瀬さんという方と横山健さんが主催となり開催されているイベント『乱』シリーズ。

関東でやれば武道館ですら一瞬ソールドアウト間違いなしのラインナップを出揃え、福井・アオッサの乱として始まった本イベントは、当初はゴールデンウィークに開催されていたが時期をずらしここ最近は夏場に開催されることが常となってきた。

また、それに合わせ福井だけでなく、新潟や長野も開催地に含まれ、北信越地方全体を巻き込んだ夏の風物詩となっている。

去年はKen Yokoyama×The Birthday×ザ・クロマニヨンズというスペシャルスリーマンイベントだったが、今年はKen YokoyamaとThe Birthdayの2組は変わらず、そこにBRAHMANが加わるという、今年も今年で強力なスリーマンとなった。

そして今年、長野公演は去年は松本だったが、今年は毎年OTOSATA ROCK FESTIVALが開催されている会場の茅野市・茅野市民館で開催されることとなった。

個人的な話だが、松本よりはるかに行きやすい場所での開催はとてもありがたく、本公演が発表された瞬間は驚きと興奮のあまり過呼吸気味になってしまった。

長くなったが、以下からこのスペシャルスリーマンイベントのレポートを行っていく。

The Birthday

最初に登場したのは、The Birthday。

お馴染みのSEであるThe CrestsのSixteen Candlesでゆっくりメンバー全員が登場すると、チバさんがゆったりイントロを引き出す。
それだけで何の曲かわかったファンはわっと歓声を上げると、ボーカルのチバユウスケさんはCome on!とマイクを使わず声を上げ、そのイントロの後の歌詞をファンが歌い出す。

歌い終わった後チバさんが「今日は茅野市民館で、BRAHMANと、Ken Bandと、お前らと、一緒だ」と言ったあと、ライブでは終盤に披露されることが多い涙がこぼれそうから始まる。

そこからは青空・LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY・DIABLO ~HASHIKA~・KISS ME MAGGIEと、最新アルバムのVIVIAN KILLERSの楽曲を立て続けに連発していく。

ここ最近のThe Birthdayは、ゾーンに入っていると言っても過言ではなく、チバさんをはじめギターのフジイケンジさん・ベースのヒライハルキさん・ドラムのクハラカズユキさんが強靭なリズムを刻み、より唯一無二のチバさんの声を引き立てつつ、存在感を強烈に与えてくる、バンドとして脂が乗っているを通り越し、もはやその脂が乗っている状態が当たり前という程、強靭なバンドとなっている。

立て続けに5曲終わった後、フジイさんがゆっくり、まるで夜が明けるかのようなイントロを弾くと、これまで以上に客席が湧くと、歌詞にSundayとあり、まさにこの時間帯にぴったりななぜか今日はがプレイされる。

そのままOH BABY!とくそったれの世界では、曲中度々ファンに歌わせるパートを作り、この後に出てくるKen Yokoyamaに負けないほど、ファンと一体化したフロアを作っていく。

最後はこのクソメタルババアがよという始まりが特徴的な、VIVIAN KILLERSで最も攻撃的な曲であるDISKOで、最高のトップバッターを務めあげた。

MCらしいMCは全くなく、曲を次々プレイしていったが、最後にチバさんが放ったサンキュー。

その表情を見ただけで、このイベントがどれだけ楽しいものか、言わずとも理解した。

Ken Yokoyama

続いて登場したのは、この乱シリーズの(ほぼ)主催者である横山健さん率いるKen Yokoyama。

これは横山健さんのコラムに書いてあることだが、元々この乱シリーズはゴールデンウィークに開催されていたイベントだった。

しかし昨今、春フェスという形で様々なイベントが開催されており、そこを蹴ってまでなかなか北陸に来てくれる人がいないと嘆いていた本公演のメイン主催者であるキョードー北陸の廣瀬さんに、それまでこだわっていた日付けを変えてでもいいからこのイベントはやり続けた方がいいと後押ししたのが、他でもない健さんである。
もし健さんが後押ししなければ、本イベントは夏にならなかっのはもちろんのこと、この乱シリーズが続いていたかどうかすら怪しいところである。

それほどまでに、健さんはこの乱シリーズに深く結びついているのである。

SEもなくゆったり出てきたメンバーを大歓声で迎え入れると、健さんは「乱シリーズ茅野初上陸!はじめまして、東京からやって来たケンバンドです!」と挨拶をすると、挨拶がわりにこれでも食らってくれ!と言わんばかりのMaybe Maybeからスタートすると、何百人もの健さんを待ちわびていたファンが前にドドドッと詰め寄り、たちまちダイブ・モッシュまみれの空間が出来上がる。

立て続けにSave Usをプレイした後、初めてだけどめっちゃいい雰囲気だと楽しそうに会場の空気感を語り、じゃあ1stアルバムからBelieverって曲やるから一緒に歌ってくれるかい!?とフロア側で歌う練習をすると、すぐさま止め声が小さい!そんなじゃもう二度と茅野なんか来ねぇぞ!と煽り立てるとその後2回目、そして3回目の練習の後、1・2・3・4・ずら!という健さん独特のカウントの後にBelieverがプレイされる。
ちなみにこれ、本来は1・2・3・4・5だったのだが本番に途端に変えてくるところがいかにも健さんらしいというかなんというか。

Believerの後、健さんがMCで、言っていいんだかどうか微妙だけど、まぁ大雑把だからということで、もう来年の乱シリーズの話を廣瀬としていると構想を発表すると、会場は大いに湧く。
そもそも、こうして乱シリーズをやり出したきっかけの一つとして、こういう機会を設けでもしないとチバくんと一年以上会わないということがザラであり、お互いの生存確認という名目も込められているらしい。

そして、こういったベテラン・おっさんのバンドばかりで若いやつらが全然来ないと切り出し、もし若いバンドと知り合いのやつがいたら、若いやつらもっと来いよ!って言っといて!と、自分よりも年下のバンドたちに向けて宣戦布告する。

そのMCからのI Won’t Turn Off My Radioでは、いつまでも人に頼られることは難しいけれどお前にはまだやれることがあるという曲の内容そのままではないが、若いバンドが数多くいてどれだけ勢いがあっても、俺もまだまだ負けねぇよ。というメッセージをプレイで体現しているような気がした。

その後、次やる曲は本来最後にやるけど、今回はThe BirthdayとBRAHMANに挟まれてるから、だから中盤にやるよと笑いながら言う。

ただ、その後スカの曲だけどスカダンスしなくてもいい。好きにやってくれ。俺達は別に強制してるわけじゃないし、歌ってくれって言ってるけど歌わなくてもいい。俺達は好きにやってくれってことだけだ!と宣言し、普段ライブでは最後にプレイされるCome On,Let’s Do The Pogoをプレイすると、スカダンスをする人もいればモッシュをする人もいる、かたや自由に踊っている人もいるなど、パンクやロックを通り越した、音楽そのものの楽しみ方の原風景を見たような気がした。

そしてその後、これまで以上にヘビーなイントロを弾き始めると、客席は待ってました!という雰囲気になり、袖から青いシャツを着た、先程まで熱いプレイをしていたチバユウスケさんがゆったり出てきて、コラボ楽曲であるBrand New Cadillacをプレイする。
これにはそれまで後方にいたThe Birthdayのファンもたちまちモッシュピットに飛び込んでいき、今日一の盛り上がりとなり、カッケー!と誰もが思った一幕だった。

ただ、こんなカッコいい演奏の後のMCがやたらひどかった。

内容はかなり割愛させていただくが、男の潮吹きの話からこの後載せるインスタのストーリーをやりたいということやこの後出てくるTOSHI-LOWがどうやってチバくんに下ネタを言わせようかということ、PowPowPow!とクラブシーンでの(たぶん)盛り上げが長野はイマイチで、ドラムのEijiさんが俺苗字松本だから長野といえば松本だよな!だから見せてみろ!と言って(半ばやけくそで)やらせた後、ギターのMimamiさんからそんなことねぇよ、と思った長野の人結構いるよとツッコむなど、とにかくなんじゃこれと思いつつ、このグダグダ感がKen YokoyamaのMCだなぁ・・・と久しぶりのライブ参加となったが改めて思わされた。

その後この雰囲気の中やるのあれだけど、静かな曲やるわと言い、A Beautiful Songをプレイした後、くらってくれ!という言葉の後、必殺のPunk Rock Dreamがプレイされる。

それが終わった後、持っていた日本国旗を掲げると、韓国の旗持ってるやついねぇか?と客席に問いかける。

最近ケンバンドのライブには韓国の国旗を持ってライブに来ている人がおり、それを望んでいたが、今回は誰も持っていなかった。

なんで韓国の旗かっていうと、今日本と韓国問題になってるけど、仲間ならそんなの関係ねぇよな!と宣言し、後その韓国の旗持ってる子の友達がいたら、そいつに今度は俺の分も作ってくれ!って言っといて!と言い、今の日韓問題に言及する。

その後、俺は日本の国旗振ってるけど右翼でもないし、原発反対だけど左翼じゃない。それだけはわかってくれ!説明は終わった!とこれまで以上に声を張り上げ、震災後のパンクス・そして自分を歌ったRicky PunksⅢは、これまで聞いてきた中で最も1番鬼気迫っていた。

プレイ後、この旗は政府のもんじゃねぇ俺たちのもんだ!と言い放った健さんの姿はとてもカッコよく、真のパンクスを見たと誰もが思ったはずだ。

あと一曲やったら帰るよと言い、ケンバンドのテーマソングをやるわと言った後、The Birthdayとこの後出てくるBRAHMANに大きな拍手を!と言い、大きな拍手が起こったあと、それから、この乱シリーズを企画してるキョードー北陸の廣瀬にも大きな拍手を!と言うと、2バンドに負けないほど大きな拍手が生まれる。

そうやって、続けていこう繋げていこうという、そういう意味が込められた歌、Let The Beat Carry Onをプレイすると、健さんは客席に度々マイクを投げ込み、ステージ客席関係なくLet The Beat Carry Onを歌っていき、まさにケンバンドのライブってこれだよな!というカオスながらもピースフルな空気感を生み出し、持ち時間をだいぶオーバーしつつ終了した。

この乱シリーズは、健さんがいなければここまで歴史のある名物イベントにはならなかったはずであり、かつ出演するバンドもここまで豪華にならなかったはずである。
来年もほぼ間違いなくKen Yokoyamaは出るはずだが、その次もさらにその次も、いつもこの北陸地方の人たちが一年に一度自分の街で健さんに会える。
そんな風物詩に乱シリーズは間違いなくなってきたはずだ。

BRAHMAN

そして2019年の乱シリーズの最後を締めくくるのは、長野県出身のメンバーを擁するBRAHMAN。

SEが止んだ後、ここ最近のライブでは必ずと言っていいほど最後に演奏される真善美からスタートという、予想外の1曲目に誰もが驚いていた。
少ししてから袖からゆっくりTOSHI-LOWさんが登場し、さぁ幕が開くとは、終わりが来ることだと、この乱シリーズがこれで最後だということを再確認させるかのごとく歌い始めた。

真善美が終わり、雷同に入るとここからはいつものBRAHMANと言わんばかりの矢継ぎ早に曲を畳み掛けていく。

SpeculationやBEYOND THE MOUNTAIN、不倶戴天といったライブではお馴染みの楽曲からNO LIGHT
THEORY・Causation・ARRIVAL TIMEのようなレア曲もプレイされ、ここ最近のBRAHMANではかなり珍しいセットリストとなっていた。
また、CausationとARRIVAL TIMEでマイクスタンドを折ったことも併せて記しておく。

そして警醒ではついにTOSHI-LOWさんが客席に飛び込み、いつも通りダイバーを捌きつつ人の上で歌っていく。
途中、飛び込んできたダイバーの1人をヘッドロックしたり、マイクでぶん殴るなど、いつも以上に鬼の愛称そのままに誰も彼もを寄せ付けない捌き方をしており、あまりの凄さに思わず笑ってしまったと同時に、いったいこれは何の格闘技なのかと思ってしまった。

続けて鼎の問では、人の上に乗っている状態でより客席の奥の方へと進んでいき、1度もバランスを崩さずずっと立ちながら歌うその姿は圧巻だった。

そして、ここから待っている人も多いMCが始まった。

まず、このチノの乱は、この長野県茅野市で行われ、300年以上の歴史がある街で、縄文時代の遺跡も多い。

 

そんな街でやるならトリは・・・クロマニヨンズが一番合ってると思う。と切り出し、健さんがMC長かったことについても触れ、俺にも少し喋らせろといい喋り始める。

こうして乱シリーズでずっと3バンドで回ってきて、チバユウスケの楽屋で内緒でギターを弾いて、チバユウスケの楽屋で内緒でビールを飲んで、チバユウスケの楽屋で内緒で衣装を着て、チバユウスケとチューをして、ってやってたら、現在若干のチバユウスケロスになっています。なんならもうこのままThe Birthdayのツアーに着いていこうかと思ってますと、この数日どれだけチバさんとべったりだったかということを明かす。

ただ、ここから話は変わり去年もこうやって乱シリーズがあった時に、なんか足りないなぁ。アイツらがいたらもっと面白いのになぁ。と、今回BRAHMANを誘ったのも、他ならないチバユウスケだということを明かすと、会場からは大きな拍手が湧く。

だからまぁ来年はクロマニヨンズが呼ばれて俺らは呼ばれないかもしれないし、ひょっとしたらもっと若いヤツらを呼ぼうってなってSiMとかcoldrainとかHEY-SMITHを呼んじゃうのかもしれないけど、そうじゃなくて来年もこのメンツでお願いしますと、TOSHI-LOWさんはファンの要望をしっかりと汲み取っていた。

そして、こうやって先輩が沢山いて、カッコいいところを沢山見てきてわかったことは、自分のケツは自分で拭くっていうこと。1度吐いたことは飲み込まない、悪いことを言ったら自分に返ってくるように、ちゃんと自分の言葉と行動に責任を持つこと。
楽屋を出る時にもキレイにしていく。それは明日使う人がキレイに使えるために。そんなカッコいい先輩がいることを誇りに思いますというMCをすると、会場からは自然と大きな拍手が湧いた。

そして先ほどの健さんのレポート内には書いてはいなかったことなのだが、健さんはMC中に日本一のパンクロッカーだと自分のことを言っていた。それに対しTOSHI-LOWさんは、俺たちはそれを諦めた。と語った。どんなに頑張ってもチバユウスケみたいな声は出ないし、どんなに喋っても横山健には勝てない。だから日本一は諦めた、と。

ただ、日本一とか世界一とかは諦めたけど、一瞬でも見ている人の世界一になれるとは思ってる。ひょっとしたら俺も見てるあなたも、これが最後のライブになるかもしれない。
ただ、その目をつぶった最後の一瞬の、あぁライブ凄いカッコよかったなっていう、あなたにとってのその一瞬の世界一になれればいい。そういう思いを込めた1曲。と語り、今夜をプレイする。

するとステージ袖からゆっくり、BRAHMANのTシャツを着たチバさんが3度目のステージに立ち、曲に合わせハーモニカを吹きつつ、時にTOSHI-LOWさんと共に歌い、原曲とは違う、ここでしか見ることが出来ない今夜だった。

あぁ今夜終わらないでと歌詞にあるがまさにその通りで、今日が終わってほしくないことはファン・そしてアーティスト皆同じ気持ちだったはずだ。

ただ、健さんが言っていたが、来年も乱シリーズはすでに動き出しており、またこの最高の1日が生まれることは間違いないだろう。

今回初めて参加してみてわかった・・・いやもう参加する前からわかっていたが、こんな最高のイベント、続けない方がおかしく、むしろこれ辞めたらキョードー北陸大炎上するぞ!となった。

なので来年もその次もさらにその次の次も、いつまでもこの乱シリーズが続いていくことを願っている。

そして参加した時、世界一のライブがまた必ず訪れるはずであり、その時までまた生きて巡り会いたい。
そう思えた1日だった。