SHADOWS『torches TOUR』TSUTAYA O-EAST ライブレポート

2018年11月28日

ドラマしかなかった。
一言この日を表すなら、間違いなくこれしかない。

会場限定販売されたSHADOWSの2ndアルバムtorches。

このツアー前には、このアルバムを売りつくすというそのまんまの意味をタイトルに込めたSell’ Em All ツアーを行い、札幌以外はソールドアウト続出し、また初回プレス分も完売となった。

そして、そのアルバムを引き提げたツアーとなった今回。

会場限定販売のアルバムで、当日券を含め完全ソールドアウトとなったことも、他に類を見ない凄いことなはずだ。(ただ、数日前にチケットサイトを見た時には、1つのサイト以外は売り切れとなっていたため、もはやソールドアウトと言ってもよかったと思うが・・・)

なのだが、さらに今回はもう1つドラマがあった。

それは、今回ゲストとして登場したThe BONEZである。

8月の頭、 ボーカルのJESSEが、頚椎症性神経根症という病気になり、入院かつリハビリが必要となった。
そのため、8月に決まっていたライブを数多くキャンセルすることとなった。

そんなThe BONEZの復帰一発目のライブが、まさに今回となった。

これだけでも、ドラマしか起きないことはわかっていた。

長くなったが、ここから本格的にライブのレポートを上げていく。

ENTH

最初に登場したのは、今回のツアー8月分全てに帯同することになったENTH。
だが、8月の前半2本、ボーカルのだいぽんの喉の不調により2本キャンセルとなり、全公演帯同とはいかなかったが、それでも5本。さらにその間にフェスでも同じ日になるなど、この一月、ずっと一緒にいたこともあってか、グルーブはバッチリだ。

登場してさっそく、THから始まり、HANGOVER、Let it die(t) ~まこっつ走れ~とのっけからかっ飛ばしていく。
最初の方は、ENTHを知らずに大人見を決めている人も多かったが、だんだんとモッシュピットの人数が増えていき、自然とダイブも増えていく。
俺らの3つの神器は?という問いかけからのBong! Cafe’ au lait! Acoustic guitar!では、ハーコーモッシュも出てくるなど、フロアの温度も徐々に上がっていくのが見て取れる。

途中のMCでだいぽんがこの一ヶ月SHADOWSとずっと一緒にいたことを話し、頼れるお兄ちゃんみたいな存在とSHADOWSのことを言い、この1ヶ月で関係がグッと深まったことを語っていた。
そして、フロアに対し俺たちが1ヶ月ずっとSHADOWSと回ってきたから、俺らがSHADOWSに選ばれたことは覚えてくれ。と、イマイチ盛り上がりに欠けていたフロアを焚き付ければ、そりゃ引き込まれないわけがない。

終盤には夏の曲と言ってからのSWAYを披露したあと、終わったら俺らもフロアで楽しみますと一キッズであることを主張してからの、彼らの名を一躍上げたと言える代表曲、ムーンレイカーから最後のWillでは、完全にENTHのライブフロアと言わんばかりにぐちゃぐちゃなピットとなっていた。

今日初めてENTHを見た人も多かったと思うが、彼らが何故今シーンで台頭しているか、そしてSHADOWSがなぜ彼らを選んだかと言うのを伝えるには、十二分すぎる濃密な時間だった。

The BONEZ

このバンド目当てな人もこの日は多かったはずだ。
ただ、それと同時に、JESSEは大丈夫かと不安になる人も多かったが、そんな心配は、ライブを見たら吹き飛んだ。

Jungle / The Qemists feat. HacktivisをSEで登場してきた後、Until you wake upの出だしを、自身を指さしながらUntil I wake upと歌詞を変えるニクいことをした後は、これまでと何ら変わらない、モッシュ・ダイブが多発するいつものThe BONEZのフロアとなっていた。

MCでJESSEを大声で呼ぶフロアに対し、死んでねぇよ。と笑いながら言いつつも、ライブ自体は一切止めずにプレイが続く。

定番曲Louderでは、これまでだと激しいヘッドバンキングを繰り返していたJESSEだったが、今回からは首の事もあり、頭は振るには振るが、体全体を使い回転をするなどのパフォーマンスとなり、首の事に注意を払いつつも、よりダイナミックなライブパフォーマンスとなっており、心配していたこちら側の不安を吹き飛ばしてくれるような気すらあった。

MCでは、SHADOWSに感謝の意思を表し、この日までに戻ってこれなかったらきっとこの先うまくいかねぇと自分にムチを打ち、辛いリハビリを乗り越えてここまできたこと。親が決めた道を進むやつもいれば、その道を行かないで家族と疎遠になっても自分の道を行ったやつもいる。俺もバンドマンなんて親父から辞めろって言われたけど、このバンドめちゃくちゃかっけぇとか、このCDジャケ買いしたんだよねって話したりとかして、そうやって認めてもらえた。
だから、本当にやりたいことあるやつは時間がかかってもいいから諦めないでください。という内容のMCをし、見ている全員の心を打った。

終盤、Thread&Needleでは、西日本のためにと呼びかけたり、SUNTOWNでは、下手側後方で見ていた肩車をしていた親子に向かって、前はそのイヤーマフしてなかったのに、今日はしてんじゃねぇか!と嬉しそうにしたりと、どこまでも他の地域の人と子供を大切にするThe BONEZの男らしさが全開だった。

個人的に見ていた中で、痛みがどれだけライブ中にあったかはわからないけれど、100%状態が良くなった。というわけではなかったように思える。
けれど、それでもそんな心配なんかしなくてもいいというほどに、The BONEZは再びステージに華々しく、熱く戻ってきてくれた。

SHADOWS

ENTH・The BONEZと熱いライブが終わり、いよいよ本日の主役SHADOWSが登場。

セッティングをメンバー自ら行い、完了したと同時に中央で円陣を組み、今回のアルバムの一曲目Flareを演奏し始める。
終了と同時に、袖からボーカルのHiroが飛び出し、続けてアルバム通りVicesが始まると、まさにフロアは戦場と言わんばかりのモッシュ・ダイブ・サークルピットが多発する。

7曲目のミドルテンポなSwayまでの間、当然だが6曲やっていた。だが、時間を見ると10分程度しか経っておらず、CD音源よりもライブが早くなっているのはよくあることだが、いくらなんでも速すぎる・・・と1人驚いていた。

次のFreedom Is Yoursでは、Hiroは客席に突っ込み、支えられながら歌いつつ、やってくるダイバーたちを蹴散らす・・・なんて某鬼のボーカルの人のようなことはせず、むしろマイクを向けて一緒に歌うという、ファンと一つのライブ空間を作り上げる姿に、ファンを大切にするSHADOWSの人間味が見える。
また、これは個人的に思った事なのだが、Hiroを支えつつ、かつやってくるダイバー達の量も結構多いのだが、下にいる人の支える力が凄いのか何なのかわからないのだが、Hiroが安定して歌っている姿に、SHADOWSのファンすげぇ・・・と純粋に尊敬したこともここに記しておく。

そんなカッコいいライブをしつつも、MCでは茨城弁が出たり、7月に帯同したNOISEMAKERや今月のENTHは女性のお客さん多いのに、うちはなぜか男ばっかで部活みてぇなど、カッコよさを微塵も感じられない田舎のアンちゃん感が出るなど、その緩急の差がまた心地いい空間となっている(と思う)。

また、The BONEZとENTHの病気についても語り、一時はここワンマンになるんじゃないかとヒヤヒヤしていたことも明かした。
中でも、今日復帰したThe BONEZに対し、何かあったら駆けつけるっていうのを一回使ってもらったから、今度は俺らが何かあったら駆けつけねぇとなと、2バンドの絆を感じさせるMCに自然と拍手が起こっていた。

ライブはその後も、PVになったStill Remember、先のツアーで先行プレイされていたMy Direction、盛り上がり必須の鉄板曲でもあるAll I Want、Failと体力残すんじゃねぇぞと言わんばかりの攻めのセトリが続く。

中でも、Chain Reactionでは、遊びに来ていたCOUNTRY YARDのギターのYu-kiとCRYSTAL LAKEのYudaiの宮本兄弟(本当に実の兄弟)が立て続けにステージダイブをかまし、演奏終了後にはKazukiから宮本兄弟ナイスダイブ!と褒められていた。

ライブ終盤、Progressに入る前に、初めて3年たって、ようやくO-EASTがソールドアウトしたことに感謝しつつ、これからもよろしくお願いします。と感謝を述べたHiroは再び客席に突っ込み、観客と一緒にProgressを歌い、ラストにBEKを披露し、本編は終了となった。

本編終了直後、そのまま、ツアー恒例のこの日一番暴れたやつに送るBMP(BEST MOSH PLAYER)を選ぶことになったのだが、今回は暴れていたやつが多く決められないとなり、Hiroがじゃあ俺もらっちゃお!と冗談交じりに言う。
すると、客席から自然とJESSEを呼ぶ声が上がりだし、みんなが待っているとJESSEが袖から慌てて登場した。
・・・と思ったらなんと、そのままステージダイブをかました!

これにはさすがにスタッフもSHADOWSもびっくりし、慌ててJESSEを客席から戻していた。JESSE、やっぱり愛すべきバカだ。

そのまま、JESSEにBMPのTシャツが贈呈され、それに着替えて記念撮影をし終わり・・・かと思いきやここで終わらない。

そのままステージ上に残り、さらにENTHのギターのなおきが登場しKazukiからギターを拝借し、そのままニルヴァーナのカバー曲であるTourrret’sをSHADOWS・JESSE・なおきでプレイするというスペシャルな仕様でライブは終了した。

 
 
ライブハウスにはドラマが起きるという。
ただ、ここまでドラマを感じる日というのは、そう多くはないはずだと思っている。

誰が見ても、ドラマが起きるとわかっている日には、こんなにも素晴らしい一夜になるのだと実感させられた。

また、SHADOWSはライブ中、客席からよっ、日本一!と声をかけられた際、バカヤロー宇宙一だ。と答えていた。

当たり前だが、宇宙一になるなんてできるわけがない。
ただ、こうした仲間のバンドが沢山いて、そしてそんなバンドたちが起こす奇跡のような光景がある。

それは紛れもなく、そのファンにとっては、世界一、いや宇宙一の時間にいると思っているだろう。
それが、宇宙一になるということなのかもしれない。

そんな時間がこの先もまた、続くことを願っている。