LIVE STAGE ぼっち・ざ・ろっく! レビュー

2024年3月5日

まさか自分が、2.5次元の舞台のDVDを買うなんて、1年前までは思ってもみなかった。
ただ、そんな自分の考えを覆し、このパッケージを手にしたいと思うほど、この舞台は凄かった。

それは、役者の演技だけでなく、構成、脚本、本作を進めるうえで生み出されたオリジナルの存在。そして、バンドとしての生ライブ。その全てが一体になることで、あの二次元だからこそなりえていた、ぼっち・ざ・ろっく!というものを三次元の現実に卸してきて、それでいて、期待を大きく凌駕してきた、というより、ぼっち・ざ・ろっく!そのものの世界観を広げ、作品の解像度をより高めたからだ。

 

自分自身、ぼっち・ざ・ろっく!の原作漫画も読んだことはあり、アニメももちろん全部鑑賞済みであり、結束バンドの音源もよく聞いている。だからこそ、舞台にしますと発表された当初は、この作品を本当に舞台に出来るのか、本当にどうなるのか、という不安はあったのが、正直なところだった。

しかし、その数か月後の公演直前のXに投稿されていた練習風景で、後藤ひとり役の守野まも(以降、人物については全て敬称略とさせていただきます。)のギターテクに、こんな女の子がこんなバリバリのギターソロ弾いてるの?しかもちゃんと顔も良くて、えっ?本当にぼっちちゃん、実在してる・・・?と大いに驚き、そこでかなり興味を惹かれたのだ。ちなみにこの感想は、当時大真面目に抱いたことだ。

 

かつ、舞台の初日と千穐楽は配信があったのだが、その初日の配信チケットは、没入‘‘ろっく”チケットという特別なチケットとなっており、ライブ配信ではかなり珍しい、690円という破格の値段で販売されていた。

値段もそうだが、この演奏風景を踏まえて、まぁ1000円もしないで見れるなら、仮にそこまでいい舞台じゃなかったとしても、そこまでダメージはないかな、と軽い気持ちで買って見てみたところ・・・あまりの完成度に驚かされ、結果、こうしてDVDを買うまでに至ってしまった、というわけだ。

 

それを踏まえて、紛れもない本心で言うが、この公演期間であった2023年の8/11~20までの9日間。正確に言うと、14日が休演日だったため8日間になるが、日本で一番忙しく、プレッシャーを誰よりも感じてステージに立っていたバンドマンは間違いなく、この結束バンドの4人だろう。
他の日本のバンドを蔑むわけではないが、ただ、贔屓目抜きで見ても、間違いなくこの期間中であれば、この4人が一番、バンドとしてハードな生活を送っていたと断言する。

 

舞台の上で演技をし、8日間の内の5日間は一日2公演を行う。それだけでもハードスケジュールなわけだが、舞台を続けていく中で、演技に反省点があれば、次の公演までには改善をし、アップデートをしていかなければならない。
そして何よりも、この舞台には、結束バンドとしてのライブもある。故に、突貫工事の、それこそ本当にアニメの1話のような、急場しのぎのバンドというわけにはいかない。

何よりも、この舞台に来るお客さんのほとんどは、ぼっち・ざ・ろっく!・ぼざろ(以降、この2つを本文中では都度使い分けをしていきますので、ご容赦ください。)の漫画やアニメ、結束バンドの音源を見て、聞いて、それで心が動かされ、足を運んだファンだ。

故に、ただ上手い演奏や演技をすればいいだけではなく、役を通しているからこそ、目の前にあの4人がいて、そしてライブをしていると、見ているこちら側にスッと、自然と認識させなければならない。
演技もそうだが、バンドとしての演奏時においても、役者本人ではなく、結束バンドとして、そこにいなければならない必要があるからこそ、今回選ばれた4人のプレッシャーは、こちらがいくら想像をしても足りないくらい、プレッシャーがあったことだろう。
 

だが、見る側が一方的に感じていた期待や不安を、この舞台とこの4人は優に越えてきた。

 

紛れもなく、あの8日間、確かに、結束バンドがいたのだ。後藤ひとりが、伊地知虹夏が、山田リョウが、喜多郁代の4人が、ちゃんとバンドとして、そこに生きていて、そして、ライブをしていたのだ。

 

そういった、自分が感じた驚きと興奮のまま、この舞台のDVDを購入したため、この自分が感じた驚きの意味を込めて、今回レビューをしていく。

勿論、読んでいる人の中には、2.5次元舞台だからと下に見ている人も、中にはいるかもしれない。あるいは、どうせコスプレ、というような印象を持っている人もいるはずだろう。
そういった意見があるのもわかっているつもりであり、何よりも自分自身がそうだった。

しかし、そういった意見や考えを自分自身がこの舞台を見て覆えさせられたからこそ、その偏見を吹き飛ばす意味も込めて、長文にはなるが、レビューをしていきたいと思う。

なお、念のため予めお伝えをしておくと、筆者は10年以上邦楽・洋楽含め、ロックという音楽のファンであるため、そのニュアンスも交えたレビューとなるため、そこはご容赦いただきたい。
加えて、かなりネタバレが多いレビュー記事となっているため、これから手にするからネタバレはNG、という方は、そっと閉じていただき、見終わってから、また読んでいただければと思う。

本作の結束バンドキャストの音楽歴・舞台歴

まず、本編の紹介に入る前に、そもそもこの結束バンドのキャストの4人

・後藤ひとり役:守乃まも

・伊地知虹夏役:大竹美希

・山田リョウ役:小山内花凜

・喜多郁代役:大森未来衣

この4人がどういった音楽経験があるか、ということをまずお伝えしないと始まらないと思ったため、そこからお伝えをさせていただければと思う。

 

本舞台の上演前、チケットサイトのイープラスが運営しているメディア【SPICE】にて、事前のインタビュー記事が公開され、そちらにキャスト本人の口で、それぞれ個人としての音楽経験を語っていたため、以下に引用させていただく。

 

大竹美希(伊地知虹夏役):ドラムは小学1年生の頃からやっています。姉がバンドをやっていたので、一緒にステージに立ちたかったんです。現在では自分のバンドを組んでいます。でも最近は自分のバンドで演奏するよりも、サポートメンバーとしてドラムを叩くことの方が多いですね。今年の4月には、日比谷野外音楽堂で開催された『NAONのYAON 2023』で演奏してきました。

小山内花凜(山田リョウ役):7年ほど前に事務所の方とガールズバンドを組んでいた経験があります。楽器はベースでした。その頃にライブハウスや大きな会場で演奏させていただいていましたが、そんなに経験豊富だったり腕前がすごいというわけではないです!(笑)

大森未来衣(喜多郁代役):ギターは個人的に好きで弾いていましたが、バンドの経験はありません。ミュージカル作品など歌を歌う舞台に多く出演させていただいていたので、歌の経験はあります。でも、人前で楽器を演奏するのはこれが初めてになりますね、喜多ちゃんと同じです。

守乃まも(後藤ひとり役):あっ、……私は主にギターボーカルでバンドを組んでいました。大きめの箱から小さなところまで、さまざまな場所で演奏していましたが、さらに詳しく言うとバンド名が特定されてしまうかもしれないので、これ以上は秘密です(笑)。
(引用元:「ぼっち・ざ・ろっく!」が舞台に! “結束バンド” キャスト4名と演出・山崎彬(悪い芝居)に聞く、生歌唱×生演奏のLIVE STAGEの見どころは | SPICE – エンタメ特化型情報メディア スパイスより引用)

 

このように、それぞれがちゃんと楽器を触っていることは勿論、その内の3名は人前での演奏経験がある。大竹美希に至っては、女優ではなく、本業はサポートドラマーでもあるという、いわば音楽のプロも混ざっているため、演奏的には文句の付け所がない集団だ。

唯一、喜多郁代役の大森未来衣だけが人前での演奏経験はないが、それでもミュージカル作品に出演し、舞台の上では歌っていたことはあるため、歌唱経験はあるという、音楽的には折り紙付きの経験を持つ人間の集まりであり、このバックグラウンドの知見を持っているだけでも、この4人はただものじゃない、というのは伝わってくるはずだ。

 

ただ、ここで不思議というか、信じられないことなのだが、大森未来衣だけが、舞台役者として舞台を経験しているが、2.5次元の舞台はこれが初。なのだが、他の3人は2.5次元舞台どころか、これが初舞台だったというのだ。

あまりにも、というより、誰がどう見ても、音楽経験と舞台経験を天秤にかけたとして、不自然極まりないほどの、アンバランス感がある。

なのだが、この4人が板の上に立つと、ちゃんとバンドとして成り立っている凄さと、誰がどう見てもベストマッチで、あの4人が本当に実在している、と自然と思わされるこのキャスティングは、偶然が重なりに重なって生まれた、奇跡であろう。

本作はアニメの何話までを描いているのか

ストーリーについては、アニメを見てもらえばわかるため、ここでは割愛をさせていただきたいが、では本公演はどこまで再現しているのか?ということについて気になっている方も多いかと思う。
当然、アニメの端から端まで、全てを舞台で忠実に再現しているわけではない。

 

これはネタバレかもしれないが、おそらく本舞台を見るうえではそこまで大きいネタバレにならないためお伝えをさせていただくと、本舞台は、アニメの1話~8話までを再構成して上演がされた。

つまり、学園祭のライブまでは残念ながら本公演では描かれなかったが、あの台風直撃の中で行った初ライブ。そして、アニメ8話の最後で、虹夏がぼっちちゃんに言ったあのセリフまでが描かれる、という運びになる。

何度も言うが、ネタバレかもしれないが、それでも本公演を見るうえではさほど気にならないことや、むしろそこまでだからこその、あるサプライズ、もあるため、ぜひ最後までワクワクしながら見てほしい。

 

と、ある程度大まかな、概要的な部分を書いたため、次からは本舞台の筆者が選ぶ注目ポイントを書いていきたい。
かなり長くなるが、ご容赦いただければと思う。

本舞台の注目ポイント

キービジュアル

まず、第一に注目をしてほしいのが、本舞台のキービジュアルだ。

このキービジュアルは、ファンならば見覚えある光景だが、アニメ版のキービジュアルを再現したものになる。

だが、このキービジュアルを最初に見た瞬間、自分はとても驚いた。

 

何しろこのキービジュアルは、結束バンドの初ライブの地であり、星歌が虹夏のために作ったライブハウス【下北沢STARRY】の元になったライブハウス【下北沢SHELTER】にて撮影がされているのだ。

 

見覚えのある市松模様のステージに、多くの人が足を踏んだことにより、あちこち傷がついていて、所々が凹んでいる。しかし、それこそが味わいと言えるこのボロボロさは、いくらPhotoshopやAIが発達したからとはいえ、決して作ることが出来ない、誇りある汚れと傷みっぷりだ。

このキービジュアルが公開されたタイミングで、これを一目見た瞬間、このキービジュアルがSHELTERで撮影されたのだとわかった自分は、この舞台、めちゃくちゃ気合入ってるな・・・と感じた。
そう思ったからこそ、まず最初にこのキービジュアルを紹介させていただいた。

後藤ひとり役・守野まもの怪演

本舞台でやはり一際目を引くのが、主人公である後藤ひとり。それを演じている、守野まもだ。

これはもう、第一に感じたことであり、誤解を招く言い方になるかもしれないが、あえて直感で感じたことをそのまま言わせていただく。

 

 

ぼっちちゃん、キモイ。

 

 

悪口と思われるかもしれないが、ただ、見ていただいた方は、多くの人が共感してくれるはずだと信じたい。

とにかく、ぼっちちゃんが、キモイのだ。

 

普通、こういった2.5次元の舞台ならば、カッコいいキャラはカッコよく・可愛いキャラなら可愛く演じるのが常なのだろうが、ご存知の通り、近年稀に見るほどクセが強く、時に人間じゃなくなることもある、超コミュ障キャラの後藤ひとりだ。

それを演じるとなると、カッコいい部分も当然あるのだが、その多くは挙動不審な動きとおどおどとした言動であり、アニメだからまだマイルドになっていた部分もあるが、これをいざ三次元で表現したら・・・当然だが、キモくなる。
その気持ち悪さが、全編に渡って出ており、これは付き合う方も大変だと、他のメンバーやぼっちちゃんに関わっている大人の方々に、ちょっと同情してしまうほどだ。

かと思っていたら、ぼっちちゃんさながらにギターを超絶テクで弾く。その立ち振る舞いとギターを弾く姿の格好良さに、ギターヒーローだ・・・!と思い直し、やっぱりぼっちちゃんカッコいい!と思ったその矢先に、またキモくなる。

こんな気持ち悪いとカッコいい、その両方を兼ね備えたその姿は、キモかわいい、ではなく、キモカッコいいとも言うべきジャンルに属する姿なのかもしれない。それを演技することが出来る守野まもの凄まじさたるや・・・と思っている中で、最後まで見て気付くことがある。

 

これは、演技もあるが、半分以上、守野まもの、素、なのだと。

 

カーテンコールの場面で、全出演者が舞台に出てきて挨拶をするのだが、本舞台は当然後藤ひとりが主役であり、座長なため、挨拶をする。

ただ、自分もそこまで観劇の経験がないため詳しいことは言えないので、想像の部分も大いに含まれているという上で読んでほしいのだが、本編も終わってカーテンコールで挨拶をします、となった際には、少し役が抜けて本人が出てくるものなのかもしれないが、ここでも地続きで、おどおどした喋り方をするのだ。
これが演技ならば凄いと思ってしまうのだが、本作を手に取って見ていただければわかるが、これは完全に、守野まもの性格そのものなのだ。

なので、今回の演技もある意味では、守野まもそのものの自然体でやれているところもかなり多くあるのかもしれない。そうスッと腑に落ちてしまうほど、本当に、最初から最後まで通して見ても、どこまでが演技で、どこまでが素なのかが本当にわからなくなるほど、守野まもが、あまりにもぼっちちゃんそのものなのだ。

 

事実、以下に紹介するリンク先はぼっち・ざ・ろっくのラジオ【ぼっち・ざ・らじお】にて、この舞台の公演期間が終わった直後に配信されていた回になるのだが、この回はまさに、この舞台の感想戦のような回になっている。

その中で、喜多郁代の声を担当した長谷川育美は、この公演を見ながら、『まもちゃんはどこから見つけてきたんですか?』とスタッフに聞いてしまったそうなのだが、後藤ひとりの声を担当した青山吉能も観劇中に同様のことを聞いてしまったという。けれど、これはキャストだけでなく、この舞台を見た人皆が同じ気持ちであるはず。マジでこの子、どこから見つけてきたの?と本心から出てくるはずだ。

その中で、青山吉能が出した結論として、『守野まもって名前なだけのぼっちちゃん』と結論付けていたのだが、これはおそらく見た方全員、納得の意見なはずだ。

守野まもは、ぼっちちゃんなのだ、と。

ANIPLEX公式配信
(※該当部分付近からスタートするよう時間を調整してあります。)

 

なのでぜひとも、この守野まもが演じる後藤ひとりは、ぼざろを少しでも触れたことがある人には、ぜひこのキモカッコいい勇姿(奇行?)を見ていただきたい。
そして見終わった後には、ぼっちちゃん実在してたよ・・・と口を揃えて言うこと間違いなしである。

他の3人のメンバーの解像度がより上がる

当然、後藤ひとり以外の3人、あえて作品での呼び方でここは言わせていただきたいが、虹夏ちゃんもリョウさんも喜多ちゃんも、ちゃんとアニメからそのまま飛び出してきたかのようなビジュアルと演技をしているのは、言わずもがな。

なのだが、先程も紹介したように、ぼっちちゃんが現実にいると、こりゃ人として付き合うの大変だろうな、と思いがちな中で、そういった偏見を持たず、優しく接する他の結束バンド3人の印象がより良くなり、漫画やアニメでも感じてはいたものの、三次元にしたからこそ、空気感がよりダイレクトに伝わり、この子達めっちゃくちゃいい子だなぁ・・・と、その人格に改めて感動してしまうほどだ。

 

特に、虹夏は一部ネット界隈では、下北沢の大天使、なんて呼ばれ方をされている。確かに、漫画やアニメでもそれはよく感じられるのだが、舞台だからこそ、よりその優しさを強く感じられるため、これは確かに、下北沢の大天使・・・と感じてしまうはずだ。

また、先程紹介したラジオ内でも声優陣2人が語っているのだが、大竹美希演じる虹夏の喋り方が、本当に声優を務めた鈴代紗弓の喋り方そのものだという。
キャラクターの声を担当し、隣で声をずっと聞いてきた声優陣である2人が太鼓判を押しているのだから間違いがないのだが、確かにあまりにも、そっくりすぎるのだ。

なのでぜひ、ラジオでも触れている、語尾の落としや、ぼっちちゃーん、と呼びかけるところはぜひとも聞いてほしい。

 

勿論、リョウさんも喜多ちゃんも、本当にそっくりそのまま出てきたように感じられる。

リョウは、作中でもそうだが、顔が良く、ユニセックスな見た目をしているため、一番真っ先にキャーキャー言われのがリョウになる。
が、ご存知のように、中身は万年金欠であり、ぼっちちゃんからお金を借りる・お金がないから草を食べるなど、顔は良いのにお金にだらしない、ダメ人間キャラだ。

ただ、弾いている姿や立ち姿は、一番カッコいいため、確かにこれはこちらも、キャーキャー黄色い歓声を上げたくなる。けれど同時に、おいお金返せと言いたくなる、ダメ女っぷり。そんなプラスとマイナスの温度差も、ありありと感じられる。
無論、草もちゃんと食べる。

ちなみに、その食べていた草なのだが、見ていただければわかるが、○○である。
ここはネタバレになるため言えないので、ぜひ買って、何の草を食べていたかを見ていただきたい。

 

喜多ちゃんについても、クラスでは明るいポジションにいる、いわば陽キャ、に位置する存在だ。

そういった明るいキャラが実際にいたらどう振る舞っていて、どう見えるのか、ということや、こんな陽キャでキラキラした子が、ぼっちちゃんのような、陰キャと付き合うという、そのアンバランスさもありありと伝わってくる。

加えて、ボーカルで、おまけに顔が良いからこそ、歌いながら笑顔を向けられたら、あ、今俺に微笑んでくれた、と勘違いを起こしてしまう。そんな感覚を抱いてしまうほどだ。

 

後、これは最後に言っておきたいが、とにかく全員、顔が良くて可愛くて、芝居も完ぺき。そして楽器もめちゃくちゃ上手い、とだけお伝えをしておく。

ぼっちーずの八面六臂の大活躍ぶり

この舞台ぼっち・ざ・ろっくには、影の主役がいる。

それが、ぼっちーず、である。

 

おそらく、どのぼっち・ざ・ろっくのコンテンツでも聞いたことがないワードだと思うが、それはそうだろう。
何しろ、この舞台で生まれたオリジナルの存在であるからだ。

 

ぼっちーず、というものの説明が本人達の口からあるのだが、後藤ひとりの脳内世界をこの三次元の世界に表現させるために生み出された存在。つまり、イマジナリーフレンドならぬ、イマジナリーぼっちちゃん、というべき存在なのだ。

ただ、そのぼっちーずは、舞台初心者にもわかりやすく説明をすると、全員が今回の公演に出演しているキャストの兼ね役である。

だが、兼ね役とは思えないどころか、こっちの方が明らかに大変だろう、というより、こっちがメインなのでは?と思ってしまうほど、ぼっちーずがとにかく活躍するのだ。

 

ぼっちーずは時に、踊りもすれば後藤ひとりの脳内世界をナビゲーションするギタ男の役割もすれば、脳内での対話相手にもなれば、時には追い打ちをかけることもある。はたまた、下北沢のツチノコも出せば、更には承認欲求モンスターにまでなる。
加えて、イマジナリーフレンドではあるが、舞台転換も行い、時には後藤ひとり以外のメンバーからも、見えていないはずなのに何故か構われることもある。

と、出演者なのかスタッフなのか、はたまたこれは第二第三のぼっちちゃんなのか、とわからなくなってくるほど、とにかくかなりの時間、舞台の上でぼっちちゃんの脳内世界を再現させるためのサポートだけでなく、舞台全体をつつがなく進行させるために動くので、もはや陰の主役と言っていいほどの大活躍をしてくれる。そんなぼっちーずの活躍も、必見である。

主要キャスト以外も異常なるマッチ度合い

と、ここまではメインの結束バンド4人について話してきたが、それ以外に関わる方々も、これほどないほど、マッチングしている。

 

厳しいながらも結束バンドを見守る愛情を持つ星歌も、それを後ろから眺めつつ、同じく見守るPAさんの配役も、まさにピッタリであり、星歌の凛とした美しさと、PAさんのミステリアスビューティー的な顔立ちは、ちょっと驚くほどかもしれない。

他にも、後藤家の家族もかなりイキイキしており、特にふたりに至っては、岡菜々美・津久井有咲という、ちゃんとした子役の俳優を起用しているため、より後藤家の日常の風景を作り出している。
また、ふたりは何か、見えてはいけないものが見えているのか、三次元と二次元の間の、突っ込んだらいけないものに突っ込むこともあるため、そのメタさも必見である。

 

更に、この舞台は8話までなので、当然ながら、金沢八景も描かれる。ということはつまり、廣井きくりも出るため、必然的に、あのセッションも再現されるのだ。

ここについても、当て振りなどではなく、ちゃんと2人でセッションをしている。無論、きくりに忠実に、スーパーウルトラ酒吞童子EXを演奏をする。とはいえ、セッション中は指弾きだが、ちゃんとバチを持って弾く姿もあるため、きくりファンも必見である。

 

廣井きくりについても、現役の女性ベーシストをキャスティングしており、廣井きくり役を務められた月川玲は、YABI×YABIというバンドでベースをしつつ、様々なミュージシャンのサポートベースもしており、以前にはあの幾田りらのライブでベーシストとしても参加をしていた経歴を持つという、現役バリバリの、プロのミュージシャンでもある。
故に、彼女もまた、これが初舞台である。

そんな経歴を持つ彼女が、廣井きくりとしてベースを弾く瞬間はごく僅かだが、その圧倒的な腕前に驚かされることもそうだが、何よりも、あの廣井きくりの、どうしようもないだらしなさと、時に見せる真面目な顔も見事に表現しているため、演技についても必見である。

ぼっち・ざ・ろっくそのものの解像度が上がる舞台

当たり前な話だが、舞台とは板の上一枚で演技をし、話が進んでいくため、アニメにあるカット割りや、端折る部分というものがない。

そのため、アニメではカットされていたものや、そこまで大きく取り上げられなかった曲やシーンのフルバージョンが見れることや、また違った視点で、その出来事を再度見ることが出来るのだ。

 

例として、先程紹介したぼっちちゃんときくりのセッションについてだが、この舞台のセッションは、漫画ともアニメとも異なる立ち位置で見ることになる。

作中では、ぼっちちゃんときくりの心の声がメインで、お互いの心情がメインに表れている。当然、あのシーンは非常にいいシーンであり、自分自身とても好きである。

ただ、本舞台では、その両者の心の声というものが一切なく、音と音のセッションが、目の前で繰り広げられていく。

つまり、作中では、あのシーンではぼっちちゃんときくりの視点で描いていたけれど、この舞台ではそうではなく、目の前で女性2人が突然ライブを始めたのを見ることになるため、いわば、あの場で足を止めて見ていた、結束バンドのファン1号2号と同じ、観客の視点で見れるのだ。

 

加えて、ファン1号2号もちゃんと出てきてあのセリフを言うのだが、作中ではぼっちちゃんがそれに気づいて反応したため、その声が大きく聞こえていたという、ぼっちちゃんの視点でその声は聞こえていた。

しかし、本舞台は突然そのセリフが聞こえてくるため、同じ観客という視点で、いきなりあのセリフが聞こえてきたら、という、第3者視点でその声を聞くことになるため、それを聞いた心持ちも、また変わってくる。
これは、漫画でもアニメでも体感することが出来ない、舞台ならではの視点で見て、聴けるものになっている。

 

他にも、台風ライブの時だが、アニメでは、時間の都合や話の展開もあるため、ギターと孤独と蒼い惑星とあのバンドだけだった。

しかし、この舞台ではちゃんと、3曲全て演奏している姿が見れるのだ。

ここについても、この舞台だけでしか見れないシーンであり、最後は何を弾いていて、どんなライブをして終わったのかという、想像に委ねられていたものを、実際お出しされるため、ここでもまた、解像度が上がるのだ。

ライブシーンの精巧さ・あの曲のライブが見れる

先程も紹介したが、そのライブの時に3曲演奏をすることになるが、その前にもオーディションのシーンがあるため、そこが初めて結束バンドの4人の演奏を見る場となる。

ただ、このオーディションのライブでも、顔の向きや目線だけで、キャラ達が演奏しながら、ひとりに対して何かを感じたことがこちらに伝わってくるのが、映像にもはっきり収められている。

 

勿論、ただ精巧と称したのはそれだけでなく、台風ライブでの1曲目のギターと孤独と蒼い惑星は、アニメさながら、というより、もっと如実に、ん?あれ?とこちらも思わず首を捻ってしまうような、イマイチな演奏となっている。
これは、下手、などではなく、上手いのだけれど、肌感や空気感という概念的な感覚で、なんか盛り上がりに欠けてイマイチだな、というのを演奏だけで作り出しているのだから、それだけで凄い技術なのだ。

そうした空気感に飲まれかけているバンドの空気を壊すために、後藤ひとりがギターソロを始め、そのままあのバンドになだれ込むと、全員のエンジンがかかり、空気が変わったと見ている側にもハッキリと伝わり、先程よりも盛り上がりが生まれていくのが手に取ってわかるこの感覚が、映像作品として見ているだけでもこちらに伝わってくる。それだけでも、この4人がどれだけ努力し、本当に結束バンドという、一つのバンドとなり、時間を積み重ね、練習を頑張ってきたのかが伝わってくるのだ。

 

そうして盛り上がった後のラストに、アニメでは未披露だった、この代表曲が演奏される。

 

そう、青春コンプレックスだ。

 

言わずもがな、ぼっち・ざ・ろっくのアニメのOPであり、ビルボードの2023年の年間ダウンロード・アルバムの1位を獲得したアルバム【結束バンド】の快調な売れ行きと共にヒットしたこの曲だが、この曲を結束バンドが演奏しているシーンも歌うシーンも、作中ではない。
というより、あくまでこちらは知っているが、そもそもこの曲を果たしてアニメの結束バンドは作っているのか、というより知っているのかすら、わからなかった。

そのため、ついにこの舞台で、結束バンドが結束バンドの代表曲である、青春コンプレックスを演奏する姿が見れるのが、この舞台の最大の見所とも言える。

 

長谷川育美がステージに立ち、歌う姿はあった。無論それも最高に素晴らしいのだが、実際結束バンドの4人が演奏したら、どう演奏し、喜多ちゃんはどう弾いて歌うのか・リョウさんはどうコーラスするのか・ぼっちちゃんや虹夏ちゃんはどう弾いて、どう叩くのか。そして、4人はどんな顔をしてライブをしているのか等、想像していたその全てがいっぺんに見れるため、ここもまた、必見である。

加えて、カーテンコールではアンコールとしてもう一曲、ライブでも未披露だったDistortion!!を演奏してくれるのだが、こんな可愛らしい曲を演奏する結束バンドの姿もまた、劇中では見れなかった。
更に、これまであまり感情の高まりで動きの起伏がそこまで大きくなかった後藤ひとり、いや守野まもが、ここでは大きく動いているため、ここもまた、注目ポイントである。

バンドサウンドの講師陣はあのバンドマン達が!

本公演では、音響監督として、様々な舞台の音楽監督を務めつつ、月蝕會議やMIMIZUQのドラムでもある、楠瀬拓哉が監督をしている。

加えて、バンドサウンド全てに指導、もとい講師が入っているのだが、この講師陣が、邦楽ロックファンからすれば、驚きの人物ばかりなのだ。

 

機材コーディネート・サウンドメイク・コーチング統括を務め、かつ、守野まものギターのメイン指導を務めたのは、元TOTALFATのギターであり、現在はMONGOL800のサポートギター・SCREW WALKERのギターとしても活躍をしているKuboty(クボティ)。

ボーカルの指導・講師は、UNLIMITSのギターボーカルである清水葉子。

ギターの指導・講師は、SWANKY DANKのギターであるKO-TA。

ベースの指導・講師は、フレンズのベーシストであり、元the telephonesのベーシストでもあった長島涼平。

 

・・・と、日本のロック、特にパンクロック・ラウドロックが好きな方であれば、驚きの面々が並んでおり、なんでこの人達がやってるの!?と驚かれているかもしれない。

この錚々たる面々が講師陣に入っているため、あれほどまでに完成されたバンドサウンドになっているのだと思うと、納得である。

加えて、本メイキング映像には、その講師陣達が、役者陣にレクチャーをしている姿も収められているため、バンド好きとしても、普段はライブハウスの中でしか見ることが出来ないバンドマン達の、中々見れない姿を見ることが出来るため、これらのバンドのファン、あるいはその人のファンであれば必見である。

 

また、ここに関しても前代未聞に近いことだが、この舞台のサウンドメイクとインタビュー、使用機材などについて、あのギターマガジンにてインタビューと紹介記事が上がっている。

統括を務めたKubotyと守野まもの対談インタビューと、使用した機材について紹介がされているため、こちらも読んでいただければ、機材に対するこだわりも並々ならぬものがあるとわかっていただけるはずだ。

力の入れ方間違えてる?と突っ込みたくなるシーンの数々

勿論、ライブや演奏以外でも、あまりの見所の多さに、挙げればキリがない程、見所が満載である。

LEDスクリーンを使ったキターンとなる時の喜多ちゃんの明るさや、突然流れ出すサイケデリックな音楽とダンス。家に喜多ちゃんと虹夏ちゃんを招いたのに、一人歓迎ムードで浮かれていた自分を捨てるためにも、風船をポンポン割っていくぼっちちゃん等々、音楽と青春はありつつ、ぼざろならではのコミカル・コメディシーンも劇中では多く組み込まれている。

 

その中でも、あえて一つだけピックアップさせていただくと、音楽STATION・音ステという、何とは言わないが、あの有名音楽番組のパロディシーンがあるのだが、話している内容はどっからどう聞いても、お昼休みはウキウキウォッチングする方、ではある。

そこの尺が妙に長いのもそうだが、どっか似てる、と言いたくなるあのMCの格好。加えて、その話を聞いている後藤ひとり、もとい守野まもの、楽しそうなんだけど、その中に困惑もありつつ、ちょっと嫌だなー、と思っているようにも感じる。全く表情は変わらないのだが、色々な感情を感じられる、あの何とも表現し難い絶妙な味わいの表情は、必見である。

Disc2にも見所満載

本パッケージは2枚構成になっており、本編と各公演のダイジェスト集が収められたDisc1と、本舞台はどう作られていったのか、その裏側を追ったDisc2に分かれている。

Disc1も、トータルで200分越えの大容量なのだが、Disc2も、約210分以上あり、これだけでもかなりのボリュームである。

そのDisc2では、演技面でのメイキングとして、ぼっちーずのこのぼっちは、誰が兼役をしていたのかがわかることや、脚本・演出を務めた山崎彬のこだわりや、ユーモア溢れる演技指導、初期のライブ展開等、ここでしか見れない映像がオンパレードである。

特に、舞台上演期間中の裏側を追ったバックステージ密着映像では、出演者の中のある人が特にフォーカスされており、もはや、バックステージ映像の主役、とも言える扱いとなっている。
ここについては誰、とは言わないため、ぜひ誰かは映像をご覧になって確かめてほしい。

 

また、結束バンドの4人がバンドとなっていく過程を収めた密着映像も収められている。その中には練習風景に加え、ビジュアル撮影の裏側。加えて、音源では聞くことが絶対に出来ない、珍しい形態での結束バンドの演奏シーンなど、こちらもまた、見応えあるドキュメンタリーとなっている。

また、どことは言わないのだが、あるシーンで大竹美希が、全員にこうしようよ、というニュアンスで提案するシーンがあるのだが、これは自分だけしか感じていないのかもしれないが、ワードチョイスと言い方が、明らかに虹夏そのものなのだ。
これはもう、明らかに役と本人のパーソナリティが似通っている証でもあると言え、同時に、やっぱり虹夏は大竹美希がやるべきだったんだな、と再認識もさせられる。

ちなみに、これは音楽好き、という視点での余談になるが、大竹美希が舞台の稽古・練習中に着ていたTシャツが、ロック好きならおっ?となるTシャツばかりなので、そこにも注目していただきたい。

 

更に、このDisc2の中には、期間中の全公演のカーテンコールが収められている。
こちらについても、約75分という、大ボリュームとなっている。

ただ、なんでカーテンコールを全部集めたものが入ってるの?と、読んでいる方の中には思うかもしれないが、このカーテンコール集は、言い換えると、守野まも劇場、とも言えるものになっている。

 

座長の守野まもの、1公演も同じカーテンコールがない、独特なワードチョイスと挙動、その全てが全くもって予測不可能の連発であり、例えるならば、絶対に笑ってはいけないカーテンコール、とも呼べるものばかりなため、このカーテンコール集にも注目いただきたい。

本公演を見に来た方々にも注目

本講演のメイキング映像やバックステージ映像には、数多くの関係者が見に来ていたことが記録されている。

アニプレックスのプロデューサーから、アニメぼっち・ざ・ろっくのプロデューサー。そして、後藤ひとりの声を務めた、青山吉能が、守野まもと遭遇したシーンも映像には収められているため、ぼっちちゃんとぼっちちゃんの遭遇は、このバックステージ映像の中でも見所の一つである。

また、映像には入っていなかったが、LIVE STAGE ぼっち・ざ・ろっく!の公式Xに上がっていた写真でも、鈴代紗弓・水野朔・長谷川育美の3人もまた、足を運び、それぞれのキャラクターを演じているキャストとのツーショットが上がっている。

加えて、結束バンドの楽曲を数多く制作された音羽-otoha-・青い春と西の空の作詞を務めたヒグチアイ・アルバム結束バンドのほとんどの曲のアレンジを担当した、LOST IN TIMEの三井律郎など、関わった関係者のほとんどや、数多くの音楽関係者は、この舞台を見に来ていたようだ。

 

ただ、それとは別で、全く関わっていないが、意外な人物、いやバンドマンもまた、この舞台を見に来ていたと、この舞台の公式Xに上がっていた。

その写真には機材コーディネート、サウンドメイク、コーチング統括を務めたKubotyと、今や日本で知らない人の方が少ないであろう、Official髭男dismのギターである小笹大輔が写っている。
(ここに挟まれる守野まものプレッシャーたるや・・・)

とはいえ、知らない方からすれば、これは一体どういう繋がりなんだ?と思われる方も多いと思う。

ただ、知らない人も多いかもしれないが、小笹大輔はTOTALFATにかなり影響を受けており、中でもまさにこのKubotyがTOTALFATに在籍していた当時、見に行ったライブ中の発言が刺さり、今のスタイルに影響を与えたと公言している。

 

つまり、小笹大輔にとってKubotyとは、自身にとってのギターヒーローなのだ。

 

実際、KubotyがTOTALFATを脱退した直後、自身のInstagramでこのような投稿をしていた。


そういった繋がりがあり、今回この舞台を見に来ていたそうで、実際、自身のXでこの舞台の感想をこう残している。

小笹にとって、TOTALFATはヒーローであり、中でもKubotyが、小笹にとってのギターヒーロー、というのはこれだけでわかっていただけたと思うが、そうした繋がりがあったとはいえ、この舞台を直接現地で見に来て、バンドマンとしての忘れてはならないものを再確認し、演出や生演奏など、全てを含めて最高だったと言っているこの舞台は、バンド、ひいてはロックというものに心を撃ち抜かれ、胸焦がされた方ならば間違いなく、胸打たれるものがあり、最高だった、と見終わる頃には言っているはずだ。

 

販売形態と個人的オススメ

このLIVE STAGE ぼっち・ざ・ろっく!は、DVDとBlu-Rayの2形態で販売がされているため、お好きな方をご購入していただければと思う。



 

勿論、これだけでも大ボリュームであり、内容も素晴らしいのだが、ただ、個人的なオススメをさせていただくと、実は本当に買っていただきたいのは、今紹介したものではないのだ。

 

個人的に、このDVD/Blu-rayを購入するならば、アニプレックスオンライン限定セットを購入されることをオススメする。というか、よっぽどのことがない限り、これのDVDかBlu-rayのどっちにするか、という二択だけを頭の中に持っていればいい。

 

というのも、アニプレックスオンラインというアニプレックスの通販サイトでこの商品を購入すると、本パッケージとブロマイドに加え、なんともう1枚、ここにしか付いてこない、ANIPLEX+限定ディスクという、3枚目のディスクがおまけとして付属されているのだ。

なんだそのおまけ?そんなものだけで薦めるの?と思うかもしれないが、これがただのおまけではない。

 

内容は、結束バンドのキャスト4人が、大千穐楽公演を見ながら話すビジュアルコメンタリーに加え、オーディションを4人が実際に見て振り返るという、ビジュアルコメンタリー2本立てとなっている。
ここでしか話していない内容も数多くあるため、ここで聞いた裏話を知った上で、また本編を見ると、最初に見た時とは違う角度から見れるため、何度でも楽しめる本編になっていること間違いなしだ。

更にそれだけではなく、結束バンドの4人だけでなく、他のキャスト陣も含めたビジュアル撮影のメイキングに加えて、千穐楽マチネ(最終日の昼公演のこと)での結束バンドのライブ映像と、ここでしか演奏されなかった、ギターと孤独と蒼い惑星も収録されている。

 

ただ、ここでん?と思われた方もいるかもしれない。いや本編でやってんじゃん、と。

だが、振り返ってみてほしいのだが、本編でも2回演奏されているが、1度目はオーディション、2度目はライブハウスの空気に飲まれ、イマイチだったものだ。

 

つまり、この結束バンド4人の、100%のポテンシャルを発揮しているギターと孤独と蒼い惑星が聞けるのは、全公演通しても、ここしかないのだ。これに関しては、大千穐楽でも、聞くことは出来ないのだ。
なので、このような書き方をさせていただいた。

 

これらの内容が詰まって、総収録時間なんと約159分と、もはやおまけとは言えないレベルのディスクになっており、むしろこれまで含めて、計3枚組の作品です、とお伝えするのが正しいと思っている。
実際、自分が買ったのも、この限定セットのDVD版だ。
(Blu-rayでも良かったのですが、そこまで画質やBlu-rayだからというところにこだわりはない人間なため、DVD版を購入いたしました。)

ということはつまり、この3枚のディスクの総合計収録時間はというと・・・

 

Disc1約205分+Disc2約214分+アニプレックスオンライン限定ディスク約159分=合計約578分
時間で換算すると、約9時間38分収録。

 

という、驚きの超大ボリュームとなっており、冗談抜きで、これを1日で全て見るなら、朝から晩までぶっ通しで見続けないと、ようやく見終わらないほどである。

なのでぜひ、今から購入される方は、こちらも検討候補に入れてほしい。
というより、通常版と比較しても、約600円程金額を足せば、このセットが購入出来るため、ぶっちゃけこちらの方が圧倒的にオススメである。

今後の展開について

さて、ここまで書いてきたわけだが、既に発表がされている通り、LIVE STAGE ぼっち・ざ・ろっく!は、2024年の9月から再演と、待望の続編の上演が決定している。

続きと言われているため、8話以降の話が展開されるとみて、間違いはないだろう。
そうなると必然的に、文化祭ライブも入ってくれば、新宿FOLTでのSICK HACKのライブもあるかもしれない。

そうなれば、必然的にSICK HACKというバンドとして演奏をする必要が出てくるため、きくりだけでなく、志麻もイライザも出さなければならない。
なので、もう現段階で、既にSICK HACKは水面下で生まれており、バンドとして動き出しているのかもしれない。

 

勿論それだけでなく、あのシーンはどうするのか。学園祭だから、ぼっちちゃん、いや守野まもはあの服を着るのか・・・など、今からワクワクが止まらない。

ただ個人的に一番どうなるのかという意味でワクワクしているシーンで言うと、ぼっちちゃんがヤムチャしやがって…となるあのシーンをどう再現するかが、今から楽しみである。

個人的な希望

と、舞台の続きも今作が素晴らしい出来だったため、当然続編も大いに期待をしている。それも当然見たいのだが、個人的な願望として、もっと見たいものがある。

 

それは、この結束バンド4人の下北沢STARRY、ではなく、下北沢SHELTERのワンマンライブだ。

 

こんな素晴らしいバンドが、舞台の上だけ、というのも、個人的にはもったいなく思い、もっと違うフィールドでも見たいと欲が出てしまい、であれば、バンドならば、ちゃんとしたライブハウスでも見たいと個人的に思っている。
それに何よりも、結束バンドがこれまで、STARRYの元となったSHELTERでライブをしたことは、一度もない。

実際、写真撮影の舞台として、今回のキャストに加え、声優陣もそこで撮影をしたことはあるのだが、当然だが、下北沢SHELTERは、撮影スタジオではない。れっきとした、ライブハウスだ。
ならばぜひとも、ライブハウスをライブハウスとして使ってほしいと願うのは、当然のことだろう。

別のコンテンツにはなるが、刀を擬人化したコンテンツの2.5次元俳優が、そのユニットとしてアニメソングのイベントに出た実例もある。

ならば、結束バンドというバンドが、この世にもう1つ出来たからにはぜひとも、ぼざろの聖地であり、数多のバンドマンが立った名ライブハウス、下北沢SHELTERでライブをしてほしい。と個人的には思っているし、筆者としては、それが一番見たいと思っている。

 

加えて、今回は4曲だけであり、かつ、舞台の続編ならば、演奏する曲はあの2曲になるだろう。
だが、まだまだ結束バンドには多くの楽曲がある。故に、あの曲もあの曲もやってほしいと、ファンとしては勝手な期待をしてしまいたくなる。

無論、それをするためには色々な大人が絡むことになるのは既に重々承知しており、何よりも、この4人が苦労することになるのはわかっている。
しかし、それでもやはり、結束バンドのライブを舞台だけではなく、バンドの根城とも言うべき、ライブハウスで見たいと心の底から思う自分がいるのだ。

 

というよりも、こうでもしなければ、守野まもがずっと引きこもりで居てしまう(笑)
そのため、人前に出る機会をなんとかこうとか作りだしていただきたいと、切に願う。
仮に血眼になって2人目を探そうと思っても、そうそう出てこないような、守野まもという鬼才が、舞台が終わればまた引きこもってしまうなんて、音楽的にも役者的にも、もったいなさすぎる。

まとめ

長くなったが、今回はこの舞台ぼっち・ざ・ろっく!のレビューをさせていただいた。

最初に戻るが、まさか自分が2.5次元舞台の円盤を買うことになるなんて、1年前に言われても信じなかった。何故なら、そもそも2.5次元舞台そのものに対し、造詣も深くないことや、何よりも、そもそも通ってこなかった・見たことがなかったからだ。
これを当てはめていいならそうするが、そうした2.5次元舞台を見た、という経験で言えば、ウルトラマンのライブステージくらいしか、筆者はない。

というより、そもそも、舞台を見に行くお金があるとしたら、そのお金で実際のライブハウスへ足を運び、三密もへったくれもあったもんじゃない空間で、生のバンドの音を浴びるのが趣味な人間だ。勿論、舞台を下に見ているというわけではなく、自分自身の優先順位の付け方、という意味合いでの話なため、誤解しないでいただけると幸いだ。

 

だが、そうした2.5次元舞台に興味がない自分の様な人間や一定層に対しても、この舞台は間違いなく届くと思っており、特に、ロックという音楽が好き・ライブハウスが好き・ライブが好き、という自分のような人間であれば、この舞台は間違いなく刺さると思っている。

無論、ぼざろ自体が元々好きであれば当然この舞台は大満足出来るが、そうでなくてもこの舞台は面白いと素直に思うはずであり、逆に、この舞台がぼっち・ざ・ろっく!という作品に触れる初の機会になっても、なんら問題ないどころか、これから入りますとなるのが、むしろ羨ましいほどだ。

メンバーはどういう人間がいるのか・結束バンドがどうやって出来たのか・この作品はどういった作品なのか・何故ここまで盛り上がっているのか等々、なぜ?Why?となっている部分に対し、この作品は全てにアンサーを出してくれる。
加えて、バンドサウンドというものの良さがありありと伝わり、バンドっていいな・カッコいいな、とシンプルに思える作りとなっている。

 

かつ、これは大森未来衣がメイキング内で語っていたが、元々ギターはそこまでやってはいなかったが、頑張れば私でもこんな難しい結束バンドの曲でも出来るようになりましたと語っている。

それはまるで、本当に作中で後藤ひとりがギターを始めるきっかけとなった、テレビでバンドを見て、ギターを見て、私でも出来るんじゃないか?と想起させられ、ギターの練習を始めたという話と、ニュアンスはほぼ一緒だ。

 

この話を聞いて思い出したことがあり、話は変わるのだが、以前、関ジャムというSUPER EIGHT(元関ジャニ∞)がやっている音楽番組に、Hi-STANDARD/Ken Yokoyama/BBQ CHICKENSの横山健・木村カエラ・9㎜ Parabellum Bullet/キツネツキのギターボーカルの菅原卓郎の3人がゲストで出た際、影響を受けたアーティストについてというテーマで話していたのだが、その番組の中でも、まさに先程の大森未来衣の言ったことと同じような話をしていたことを思い出したのだ。

番組の中で菅原卓郎は、まさにHi-STANDARDを中学生の時にコピーしていたという。その時に思ったことが、3人いれば出来んじゃん、となって、楽器を手にし、バンドをやるハードルをHi-STANDARDは下げてくれたと語っており、それに対してまさにそのHi-STANDARDの横山健が、それはパンクロックをやっている側で言えば、バンドが、聴いているリスナー・キッズに対してこちらが届けられる一番のプレゼントは、自分でも出来ると思ってもらえることなんだ、と語っていた。

この大森未来衣の言葉も、それに近しいものがあり、楽器は難しい・出来ないと一見すると思ってしまいそうになるが、それでも私でも出来たと伝えるその姿は、れっきとしたバンドマンそのものであり、その姿を見て、あっ、なら自分でも出来るんじゃないか、と思えてくる。そうして、自分でも出来ると思い、楽器を手に取ってみれば、横山健の言葉を借りるとすると、それはもう、ロックの、バンドのビートを繋いでいく・繋いだ証だと言える。

 

こうした想いにさせてくれるこの結束バンドというバンドだが、実際のところ、Disc2のメイキングにて、本舞台のプロデューサーを務めた、アニプレックスの大井守が、自らの口でキャスト陣に語っていたのだが、本舞台の企画当初、当て振りという話があったという。

ただ、自分の意見は生演奏でやりたいという想いがあり、かつ、それはぼざろのアニメの音楽プロデューサーも、同じ意見だったという。
結果、当て振りにはせず、キャスト陣の生演奏ということになったが、この決断は、まさに英断だったと言え、そのような方針で舞台を作ることを決めてくれてありがとうございますと、見ている側としては頭を下げたくなる。

勿論、生演奏にこだわるとなれば、オーディションで選ぶ際、ビジュアルや演技に加え、楽器が演奏出来る、ということも審査に加わることになる。そうなれば、オーディションに参加するという段階から、ハードルがぐんと高くなる。

加えて、生演奏でやるとなれば、楽器もそうだが、キャスト陣が練習するための費用やスケジュールの管理・調整、舞台での演奏時にセッティングをしていただく音響スタッフの方々の手配など、より人員やコスト、時間など、色々なものが必要になるため、普段の舞台の何倍もコストが掛かってくることや、気苦労もあったと察する。
だが、それでも生演奏にこだわりを持ち、これでやりたいと決めた大井守プロデューサーの熱意があったからこそ、本舞台はここまで素晴らしいものになったと言える。

 

これはあくまで一ファンの意見になるが、仮にもし当て振りでやったとしたら、本舞台はここまでよくならなかったと断言したい。というより、間違いなく、ぼっち・ざ・ろっく!というタイトルそのものに泥を塗ることになりかねなかった。
ライブ・バンドというものにフォーカスを当てた作品だからこそ、尚のこと、バンドというものにこだわらなければならないはずだ。当て振りでやりますと決めたら、大炎上し、アニプレックス的にもかなりな損失となったはずだ。

故に、これでやるぞ!と決めた結果、本舞台は2.5次元舞台でも、他に類を見ない、キャストが演技もすれば(時には軽いダンスまでするのだが)、楽器を鳴らして、バンドとしてライブをするという、二重苦三重苦ある大変な作品になった。

だが、キャスト陣はその高い高いハードルを優に飛び越え、見ているこちら側を大満足させてくれただけでなく、この三次元の世界に、結束バンドのライブをまた違った形で見せてくれた。

なので、話題性があり、同時に、色々な面(それは主にぼっちちゃんが人間辞めてるところが多いのだが・・・)で再現不可能と思われたぼっち・ざ・ろっく!を、ここまで素晴らしく作り込み、現実に落とし込んだだけでなく、また違った角度で見せてくれて、見ることが出来なかったものまで見れせてくれ、結果大満足、としか言えない素晴らしい舞台を作ってくれた、脚本・演出を務めた山崎彬、大井守プロデューサー、キャストの皆様、音響の方々、楽器メーカーの方々、スタッフの方々等々、関わった全ての方々に、こんな素晴らしいものを見せてくれて、出会わせてくれてありがとうございますと、心から感謝をしたい。

 

そして、先程も紹介したが、今年の9月からは、再演・並びに続編の上演が決定している。

既にキャスト陣も動き出しているようで、パワーアップした姿をお見せすると語っており、この第1作目でも100点満点・いや120点を叩き出した今作を越えるのはなかなかに大変な苦労があるだろうが、それでも、キャスト陣がこう言っているのだから、次回作は今作以上のものを見せてくれるはずだと期待をしたい。

その時は是非、自分も現地にいたいと、心の底から思っているし、このワクワクは、舞台を見たいというだけでなく、結束バンドのライブを見たい、という意味でも間違いはないと思っている。

なので最後に、バンドサウンドがずっと好きで居続けた自分の様な人間だからこそのワードで〆たいと思う。

 

今年は、この4人の結束バンドのライブが大真面目に見たいと、心の底から思っている。

そしていつか、ライブハウスでも、結束バンドに会って、結束バンドの音を浴びて遊びたい。

追記・見る場所のおススメ

この項目を追加しているこの日、予てからこれをやろうと思って決めていたことがあり、実行し、結果大満足だった、やってみたことがあった。

この作品についてだが、舞台でもあり、ライブでもあるため、可能な限り、大きな音量、いや爆音で見ることをオススメする。

そういった時におススメなのが、カラオケ屋である。

 

カラオケ屋は、DVDを見れるプレーヤーが置いてある施設が多くあるため、予約の際にこれがしたいですと伝えておけば、問題なく使用が出来る。

かつ、カラオケ屋の音響も、一般的な家庭のものよりは高い物が置かれている場所が多いため、今からスピーカーを揃えることが難しくとも、ここなら誰の目も気にせず、爆音でこの作品を楽しむことが出来る。

無論、イヤホンやヘッドホンでもいいのかもしれないが、あの空気が伝わる感じはならではであり、かつ、家などと違い、どこかライブビューイングを見ているかのような気持ちにもなれるため、ぜひご家庭だけでなく、カラオケ屋という、家の外に持ち出して楽しむことをおススメをしたい。

音楽,アニメ

Posted by naishybrid