でんぱ組.incが与えた功績を、ロックの村の人間目線から語りたい

2024年4月22日

先日発表になったが、アイドルグループ【でんぱ組.inc】が、16年にも及ぶ活動に、ついにエンディングを打つことになった。
とはいえ、ファイナルは1年後の2025年であり、まだまだ見れる場所も数多くあるため、ライブで見れるチャンスがフィナーレまでに多くあるというのは、幸運なことだろう。

この発表を受け、SNSでは様々な界隈の方がコメントをしていた。無論、誰しも色々な意見はあるとは思うが、一個人としては、残念、という感情はなく、お疲れ様でした。と言いたいとは思う。

 

正直、自分はそこまでアイドルを通っているわけでも、きたわけでもない。
むしろ、自分の好きな音楽と言われたら、タイトルにもある通りロックバンド、と答える人間だ。

だが、そんな村の人間であっても、でんぱ組.incの活動は常に目に入ってきた。

それもこれも、ただ音楽ファンだったから、というだけではなく、でんぱ組.incは間違いなく、今でこそ当たり前になった、アイドルがロックの現場に出る、という前例を作ったパイオニアの1人、いや1アイドルだったと言える。

なので、今回のこの記事は、2010年代、ロックの現場にズブズブにおり、今もだが、その村の人間から見た、でんぱ組.incの功績について語っていきたい。
無論、一個人の目線ではあるため、間違っているところもあるとは思うが、そこはご了承いただきたい。

でんぱ組.incがロック方面に残した功績

結論から申し上げると、でんぱ組.incが、ロック方面にもたらした功績というのは、ロックフェスにアイドルグループが出るという今のこのフェスの状態を作り上げたということだろう。

 

でんぱ組.incが、一アイドルグループでありながら、ロック界隈の方にまでその名が伝わりだしてきたのは、記憶は定かではないが、少なくとも、2013年だったと記憶している。

ちょうどその頃と言えば、今や世界を席巻する【BABYMETAL】が話題となりだし、当初はメタル×アイドルという斬新な設定に、当初は飛び道具的なところや、アイドルの中でもちょっと変わった特異な存在、として見られていたように思うが、あっという間にそんな考え方や目線を吹き飛ばし、アイドル、というジャンルを飛び越え、ロック・メタルの界隈において、あっという間に世界のトップにいる存在となった。

自身もそこまで追っていたわけではなかったが、とはいえBABYMETALが彗星の如く現れ、あっという間にその存在を確立させ、武道館でライブをやります、という発表も、シーンで話題になり出してからはかなり早かったように思う。

 

無論、BABYMETALという存在はいたが、とはいえ、あっという間にそこまでのスケール感になると、中々、アイドル、というジャンルに括りにくくなり、かつ、BABYMETALをアイドルと言うと、色々揉めるような時代でもあった。
(それは今もなのかもしれないが・・・)

そんな最中、BABYMETALと時を同じくして、アイドルシーンから、ロックのシーンに入ってきたアイドルが、2組いた。

 

1組は、今やもうテレビでは見ない日がない、ファーストサマーウイカがかつて在籍しており、当時PVやライブが色々な面で話題となっていたアイドルグループ【BiS】

そしてもう1組が、【でんぱ組.inc】だった。

 

これはあくまで、筆者の体感から言わせてもらうが、この2組が、今でこそかなりクロスするようになった、ロックフェスやイベント、ひいてはバンドとのツーマンライブ。それらにアイドルグループが出る、という前例を生み出したように思う。

それ以前で言えば、【Perfume】もそこにカテゴライズされるのかもしれないが、ただ、Perfumeを見て、アイドルだ、という印象を持つ人は、そこまで多くはないのではなかろうか。
どちらかというと、テクノやダンスユニット、というイメージが先行するため、音楽に詳しくない人であっても、Perfumeに対して連想するイメージは共通していると信じたい。

 

今回はあくまででんぱ組.incのことがメインなため、BiSについての紹介はそこまで多くはしないのだが、それでも少し触れさせてもらえれば、BiSのライブは、当時のアイドルではありえないような、なんでもありのライブだった。
加えて、アイドルとしてありえない活動スタイルや露出等が相合わさり、ロック界隈でもウケるようになったと記憶している。

実際、自分も2014年、BiSのライブをBowlineというイベントで見た際、バンド同様に暴れ倒したことが懐かしく思う。

 

そんな最中、でんぱ組.incは、BiSとはまた違う形で登場してきた。

きっかけ、というと、これ!という大きなものは無かったように思うのだが、ただ、『W.W.D』という曲がヤバい、というのを風の噂、というよりSNSで、ロックの界隈からざわつきだしてきたことを覚えている。

その曲を聴いていただければわかるが、かなり暗い、メンバーそれぞれのリアルすぎる実話の歌詞が、これホントにアイドル?と疑問を持つレベルであり、メンバーそれぞれの個性も相合わさり、気付けば、ロック界隈からもじわじわ注目され出していた。

実際、この2組自体も当時親交はあったため、お互いに意識はしていたものとは思うが、とはいえ、思えば間違いなく、この2組は今のロックフェスやロックのイベントに、アイドルが出るということの起爆剤を作ってくれたはずだ。

 

今でこそ、アイドルがロックフェスに出ても、えっ?という反応はされなくなったように思うが、とはいえ10年前は、まだまだザワつき、アイドルがロックフェスだぁ?というような反応も、多かったように思う。

だが、そんな中でも、BiSとでんぱ組.incの2組は、そういったアウェーとしか言えない現場にも堂々と出ていき、ロックの村の人間からも、市民権を獲得し、バンドとアイドル、という相反するものを繋ぎ合わせたと言える。

特に、ROCK IN JAPANやSUMMER SONICでも、アイドルが出るステージもそれ以前からあったが、一番小さいステージや、それらの会場とはまた違ったスペースなど、悪い表現に聞こえるかもしれないが、それを承知で言わせてもらうと、扱いとしては、バンドなどよりも下、というような扱いの方が多かった。

だがしかし、でんぱ組.incは、そういった場ではなく、ちゃんとした、数千人が入れるようなステージでライブをしていた。
今となってはこういったことの方が当たり前だが、当時はそれだけ、異例のことだった。

そのような状況の中で、でんぱ組.incはロックフェスに出演し、話題をかっさらうことも多かったように思う。

 

さらにそれだけでなく、10年ほど前のでんぱ組.incは、自分達のライブで、当時、いやむしろ、未だに珍しいと思うが、とにかく、バンドと対バンしていた。

【SiM】・【Fear,and Loathing in Las Vegas】・【9mm Parabellum Bullet】・【ストレイテナー】・【サンボマスター】・【T.M.Revolution】、果てはアイドルと対バンすることなんてありえないと誰もが思っていた【BRAHMAN】など、明らかに誰がどう見たって、異色、としか言えない組み合わせのツーマンを、自らのツアーで実施してきた。

もちろん当初は違和感もあったが、時間が経つにつれそういった違和感もなくなり、むしろ肯定や喜びの声が多くなってきたように、振り返れば思う。

 

そして今、でんぱ組.inc自体がロックフェスに呼ばれることは、前ほど多くはなくなっているが、ただ今日、どこのロックフェスに、ひいては音楽フェスにアイドルが出ても、浮いていない・浮かない、それどころか、そもそもの違和感を覚える人の方が少ないかもしれない。
そうフェスの参加者に思わせないほどの功績を作った存在、いやアイドルとして、間違いなくでんぱ組.incがいなければ、ここは語れないだろう。

BiSもいたが、先程フェスの部分で挙げなかった理由として、2014年の7月にいったん解散をしており、ちょうど夏フェス直前に解散をしたため、夏フェスが始まる前にBiSが終わってしまったという、なんともいえないタイミングもあり、ちゃんとしたロックフェスへの出演は、ほぼ全くといっていいほどなかった。
また、活動を終了したものの、2016年以降再結成・解散・また再結成と、やや色々ごたごたしており、あまり第一期以降のBiSがロックフェスに出るのは少なくなったように思う。

むしろ、第一期のBiSが作った魂やスタンス、といったものは、そのBiSをもう一度という想いの元で生まれた【BiSH】に受け継がれたように思う。
その活躍というのは、むしろ読んでいる皆さんの方がよく知っているかもしれない。

 

無論、BABYMETALもいたが、BABYMETALは何よりも、2013年以降一気に人気が加速し、日本で人気になってから、あっという間に海外でも人気になり、海外のフェスに引っ張りだことなった。
そのため、日本でライブをする際も、日本人でありながら、海外のバンド・外タレ、のような存在になり、日本発で世界を熱狂させるロックの代表、とも呼べるビッグネームになっていたため、もはやアイドルなんて気軽に呼べるような存在ではなくなってしまった。

 

故に、アイドル、という存在で見れば、ずっと続けてきたことや活動含め、間違いなく、でんぱ組.incの方が、アイドルとロックを繋げた、パイオニアと呼べるだろう。

おわりに

長くなったが、今回はロックの村の人間から見た、でんぱ組.incがもたらしたこと、について紹介をさせていただいた。

勿論色々な意見があるとは思うが、ただ、2010年代のフェスに多く参加していた方々であれば、同意していただける方も多いと思っている。

ここまで書くと誇大広告かもしれないが、一個人の意見として、日本のフェスシーンにおいて、でんぱ組.incがフェスに登場する以前・以降というのは、言い方を変えると、アイドルがいないフェスといるフェスという分け方や言い方でも間違いないかもしれない。

それほどまでに、彼女たちはエポックメイキングであり、同時に、フェスのゲームチェンジャー的存在だった。
これはおそらく、ロック好きならば、そう答える人も多いのではないだろうか。

 

だからこそ、今回このように、でんぱ組.incがロックフェスシーンにもたらしたことについて、紹介をさせていただいた。

故に、来年ついに、16年に渡る活動にエンディングを打つというのは、音楽シーンにおいても残念なことだが、ただ、でんぱ組.incという存在がいたからこそ、生まれたアイドルも数多くいただろう。
もっと言えば、アイドルでありながらも、ロックフェスに出たい、と、でんぱ組.incの活動を見て、そこを目標に据えたアイドルも、少なからずいるはずだろう。

そんなフォロワーを多く生み出したアイドルだが、冒頭で紹介をしたように、ありがたいことに、まだまだ来年まで生で見れる機会は多いため、ぜひとも気になっている方、前にライブ行ってたな、気になってたんだよな等、興味があるようであれば、この機会を逃してしまったら、当たり前だが、もう見ることが出来なくなってしまうため、ぜひ足を運んでいただきたいと思う。

音楽

Posted by naishybrid