Parkway Drive Live in Tokyo 2025 豊洲PIT ライブレポート

一言で言うならば、ありえない。それは、規模感が、という意味で。

 

世界的なメタルバンド、Parkway Drive。メタルコアと言う人もいるとは思うが、ここではざっくりと、メタルということで称させてもらう。

そのParkway Driveであるが、世界的な人気は凄まじく、母国であるオーストラリアでなくとも、ヨーロッパやアメリカなど、世界のどの地域でも、主催ライブはアリーナ公演が主であり、フェスでもヘッドライナーということがほとんどだ。

また、フェスと言っても、日本のフェスとは規模感が違うものも数多くあり、ヘッドライナーとして、8万人の前でライブをやるということもあるのだと本人達は語っているため、これだけでも、彼らの人気は凄まじいものだと、どういうバンドなのか知らなくとも一目でおわかりいただけたはずだ。

 

だが、今回、日本の単独公演は、アリーナではなくライブハウス。それも、3000キャパシティの豊洲PITだ。
もちろん、豊洲PITがとても大きいことを自分も重々承知している。だが、Parkway Driveがやるにしては、小さすぎる。そんな印象しかない。

別のバンドで例えるのも失礼な話かもしれないが、仮に、Slipknotの単独公演を豊洲PITでやるとなったら、おそらく小さい、と言う方がほとんどであろう。
そのくらい、世界的に見ればこの公演はありえないものであり、日本と世界での知名度の差がこんなところで如実に表れるとは思ってもみなかった。

 

だが、逆に言えば、アリーナ公演でしかやれない世界的なバンドをこの規模で見れるというのは、非常にプレミアムな機会となったことは、言わずもがなだろう。

ただ、この公演だが、開催の発表が開催の40日前という、あまりにも急な発表であったため、決してパンパンというわけではなかったというのは正直なところではあるが、それでも、単独公演を楽しみにしていたファンの熱量は、物凄く高いものであり、そんな心配なんて杞憂だった、ということもここに記しておきたい。

 

また、この日だが、Parkway Driveのライブ演出の定番である火柱が上がることもなければ、特効もなかった。それもまた、海外のファンからすれば、ありえない話だろう。

だからこそ、純粋にバンドのみの力、それだけを余すことなく堪能出来たというのも、貴重な機会であり、全てにおいて、この日しかなかったであろう、特別な一夜のレポートをしていく。

この日は18時から開場・19時開演だったが、その間の18時30分から、今回のサポートアクトである、日本のメタルコアバンド、PROMPTSのライブが始まる。

この日は海外のライブでよくある、メインのバンドのセットの手前に、サポートアクトの機材が置いてあるというスタイルであったため、環境が少し異なっていたものの、アウェーやハンデを全く気にすることなく、ライブを行っていく。

 

初めて見る人も多いと思うので自己紹介をすると、韓国と日本のバンドPROMPTSと申しますと、韓国出身のボーカルであるPKは挨拶をする。

中学の頃から、メタルコアというジャンルにおいてヒーローであり、韓国に居た時から、Parkway Driveはやばいという思い出を語り、日本に来てから6年が経ち、バンド活動をしていた中で、現在在籍しているオーストラリアのレーベルであるGreyscale Recordsに在籍することになったのだが、そのレーベルの仲間や友人達から、日本でParkway Driveのサポートアクトやるならお前らがやるでしょ、という激励の言葉を受けたことを口にする。

だからこそ、そんなメタルコアヒーローと一緒にライブをするという大きな一歩を踏んだからこそ、アジアを代表するヒーローとなると自分に誓ってて、これから必ずそうなろうと思ってますと宣言をし、気に入ってくれたならこれから一緒に上まで行きましょうと宣言し、StrangerやAsphyxiate、Edgerunnnerといった楽曲を続けてプレイし、フロアを温めてからステージを後にした。

 

PROMPTSの熱いサポートアクトが終わり、手早く機材が撤収されると、ステージにはParkway Driveの今回のセットである、特製のお立ち台のみが残されている。

4段ほどある階段の先の中央には、長い階段によくある踊り場のような中央のお立ち台に加え、左右それぞれにお立ち台があるが、左側にはドラムセットが置かれている。
また、その左右それぞれの踊り場の下には、金属で出来ているであろうParkway Driveのロゴマークのシンボルだけでなく、それを取り囲むかのように、周辺には針山のようなオブジェがある。
まさに、メタルのステージかくあるべし、といったような雰囲気をひしひしと感じる。

 

そうして20分ほどの転換時間の中、ハードロックを代表する楽曲が流れ続ける中、突如機械音声で5カウントを告げる音声が流れ、0になった瞬間、客電が落ちると共に、ステージに大量のスモークが炊かれ出す。
それと共に、袖から現れるParkway Driveのメンバーの姿は、さながらメタル界のチャンピオンが降臨したかのようだ。

ドラムにはベンが、その隣の右手側のお立ち台にはベースのジアが。そしてそのお立ち台の前には、右からギターのジェフ・ボーカルのウィンストン・ギターのルークという立ち位置につく。

 

そこではたと気付いたことであり、えっ今更気付いたの?と思うかもしれないが、ライブに初めて参加したため筆者はようやく気付いたのだが、ウィンストン以外、誰もマイクがない。誰の前にも、マイクスタンドがない。
ということはつまり、コーラスを誰もしないということだ。

しかし、ライブを見ればすぐにコーラスなんて不要ということがわかるくらい、ウィンストンのボーカルは強烈であり、かつ、メンバーそれぞれが、それぞれのパートを極限まで高め、こなしているからこそ出来る技なのだと、この日のライブを見て思わされた。

 

ぞくぞくするようなイントロから始まるGlitchでライブをスタートさせ、Preyでは大合唱とジャンプが巻き起こる。更に、Preyのラストのサビの前には、いち、に、さん、し!と歌詞を変え、日本語でのカウントにするという粋な演出をボーカルのウィンストンはしてくれる。

だが、これはこの後見せる日本へのサービスの、まだ序の口でしかなかった。

 

東京!ありがとうございます!とサンキューではなく、日本語でありがとうございますと言うウィンストンだが、これは最後までずっとそうだったと、ここに記しておく。

また、曲が終わり、次の曲までの音が鳴りやんでいる時には、フロアからParkway Drive!というコールが、最初から最後までずっと行われいたと併せて伝えておく。
念のため2回お伝えをすると、ライブの最初から最後までずっと、である。

 

現在の最新曲であるSacredで更にモッシュピットを起こすと、我慢出来なくなったのかクラウドサーフをするファンも出始める。
こうして見て思うが、メタルファンのクラウドサーフは、上でバタバタすることがないため、ここについてはパンク界隈や邦楽のバンドのライブのダイブとはまた違うところであるなと思わされることとなった。

君たちの喉は調子どう?と英語で尋ねた後、Yeah,Yeah,Yeahというコールアンドレスポンスを起こしたうえで、Vice Gripをプレイすれば、もはやそんな事前のコールアンドレスポンスなんて必要なかったというくらいに、大きい声でYeah,Yeah,Yeahとそのパートをフロアも歌っていく。

 

ありがとうございますと再び日本語で感謝の言葉を伝えた後、俺達は2007年に来ていたけどその時来てた人いる?と英語で尋ねると、幾人かのファンが手を上げる。
だが、その数が想像していたよりも多かったのか、Fxxk Yeahと笑いながら言うと、じゃあ激しい曲をやるよ。モッシュピットいいかい?と英語で尋ねると、フロアも負けじと歓声を上げる。

そうしてその当時のファンに捧げるかのように、2ndアルバムからBoneyardsが投下されると、待ってました!と言わんばかりに、巨大なサークルピットが生まれる。
しかし、それでもまだまだと言わんばかりに、東京、もっと大きいサークルピットください!とウィンストンはまさかの日本語で要求すると、更にサークルピットは大きくなるだけでなく、激しさももっと増していき、ツーステップやテコンドーモッシュなど、ハードコアのライブのような楽しみ方をするファンも多くいる。

 

更に続けて2ndアルバムの表題曲でもあるHorizonsからThe Voidをプレイする。が、ここでこの日のライブのハイライトと言ってもいい場面が生まれた。

そのThe Voidの最後のサビ部分にて、左手側の前方フロアから、なんと車椅子に乗ったままクラウドサーフをしてきた人がいたのだ!
このクラウドサーフは、海外のフェスなどで稀に見る光景だが、これをまさか日本で見れるとは。加えて、ライブハウスというフェスよりも人が少ない場において。

だからこそ、まさかそんなことを日本でしてくる人が思わなかったのか、ウィンストンも思わずその車椅子でクラウドサーフをしてきた人物にへと手を伸ばしていた。
(念の為お伝えをすると、安全に下ろされたはず。)

 

一度会場の照明を全て消した後、アコースティックギターの音色がフロアに鳴り、そこからウィンストンのボーカルで一気に激しいフロアへと様変わりしたWishing Wellsから、3枚目のアルバムであるDeep Blueのタイトルを口にすると、一気にフロアの期待感が上がり、Sleepwalkerと叫べば、今のParkway Driveのサウンドにアレンジされ、より激しく、より強力になっているサウンドに、オールドファンの興奮は止まらない。

 

曲が終わり、フロアに怪しげな鐘の音が鳴り響くと同時に歓声が上がり、Dark Daysに入ると、モッシュピットだけでなく、ブレイクダウンの部分ではテコンドーモッシュをする人も続出している。

ここだけを見ると、フロアは完全にハードコアバンドのライブのフロアだが、元々こちらの界隈のバンドがメタルにサウンドを寄せていったことに対して、その頃からのファンが離れることなく、ずっと魅了させ続けているだけでなく、メタル側のファンにも侵食させていき、結果双方のファンを惹きつけているのだから、Parkway Driveは凄い。

 

ここでギターのジェフをウィンストンは紹介し、肩を組んで素晴らしいギタリストだと紹介したうえで、ジェフのギターは時々歌うんだと英語で語り掛けると、その時々歌うというジェフのギターが鳴り響く、いや歌うのだが、そのイントロだけで、フロア中オーオーとコーラスを歌っていく。Idols and Anchorsだ。

イントロのギターを終えると、サークルピット、デカイのだ!とウィンストンが英語で叫び、フロアに巨大なサークルピットが出来ると同時に、その後ろにある、特製の踊り場の中央にて、ギターのジェフとルーク、ベースのジアの3人が集まり、弾きながらではあるが、この3人も中央の踊り場でサークルピットを作って回り出すというお茶目さに、こちらも笑みを浮かべないわけがない。

そのまま演奏を続けていくが、ラストのジェフのギターソロのパートにおいて、いつの間にかベースのジアの定位置のところにウィンストンが居たのだが、なんとその姿勢は、正座。そして、曲が終わるまで、終始正座のままであり、曲が終わる時には正座のままお辞儀をするという、おそらく世界中どこでも見れない姿のウィンストンが見れた。
というよりも、ウィンストンの正座があまりにも綺麗で、かつ、1分以上その姿勢をキープしていたと思うが、全く微動だにせず、曲が終わってからも足がしびれているといった様子もなかったため、いったいどこで習ったの?と思わず聞きたくなる程であった。

 

バラード調のサウンドに、一松の寂しさを感じつつも、壮大なスケール感を感じるDarker Stillが終わった後、全員手を挙げてくれとウィンストンは英語で語り掛け、ジャンプジャンプ!と手を挙げたままの状態でジャンプを求め、一体感に包まれたBottom Feederでは、終盤、ラストチャンス!Are you ready!と煽り、サークルからモッシュへとなだれ込み、言葉通りラストチャンスでフロアを楽しませたうえで、その言葉通り、ライブは終了した

・・・のだが、やはりこれでは終われない。

 

すぐさまフロア中、Parkway Drive!という大合唱のコールが巻き起こると、ひょこっとウィンストンが袖から顔を出し、メンバー全員、本当にすぐに戻ってきた。大真面目に、30秒にも満たなかったという体感ではあった。

そのままステージ前方に行き、メンバー全員で肩を組むと、フロアから歓声が上がる。

更に、おそらく手作りであろう、Parkway Driveのロゴと、この日の公演日程が書かれた日本国旗を掲げているファンが目に留まり、その国旗を手渡しで受け取ると、それをステージ上から掲げると、またもや歓声が沸き起こる。

 

その歓声を聞きながら、One more songと言い、簡単な曲だと英語でウィンストンが言うと、ジェフのギターが鳴り、それと共に、おそらくこの日一の大合唱が巻き起こる。

そのコーラスラインが会場中に響き渡る中、現在のメタルシーンにおいて、世界的なアンセムである一曲、Wild Eyesが始まると、サークルモッシュもクラウドサーフも、この日一番と言っていいほどの盛り上がりが生まれる。

Viva the Underdogs!と、最後のフレーズを叫んだ後、Tokyo!See you next time!We Promise!とウィンストンは口にし、いつになるかはわからないが、それでも次の再会をステージ上から約束し、改めてステージを後にした。

だが、フロアの客電がつき、公演終了のアナウンスがフロアに響き、ステージの撤収が始まるものの、フロア中からはParkway Drive!とコールを求める声がしばらく鳴り止まなかったのは、まだまだ物足りなかったからであろう。

 

実際、この日のステージは約80分ほどであったが、それでも曲数は多かった。けれど、やはり物足りない!という気持ちがないかと言えば、正直嘘になる。

しかし、こうしてステージ上から約束をしてくれたのだ。おそらく、そう遠くないうちに、彼らは戻ってきてくれるだろう。少なくとも、10年空くことはないと信じたい。

そして次に来るときには、おそらくもっと大きい会場になっているかもしれない。それこそ、海外と同様に、アリーナ公演になるかもしれない。

だからこそ、現在のParkway Driveの活動の中では貴重、としか言えない、ライブハウスでParkway Driveのライブを見た、という機会を改めて嚙み締めながら飲む公演終了後のビールが、美味しくないわけがなかった。