PIZZA OF DEATHサブスク解禁について健さんのメッセージを伝えたい
だいぶ前の話になりますが、各種音楽配信サービスで今や日本で知らない人が少なくなった人気ロックバンド『WANIMA』が配信解禁となりました。
これまで解禁されていないことを疑問に思う方も多くいらっしゃったでしょうが、WANIMAは今でこそレーベルはunBORDEという、ワーナーミュージック・ジャパン内の社内レーベルですが、所属事務所の方はインディーズの頃から今もずっと変わらずPIZZA OF DEATH RECORDSなのです。
そのPIZZA OF DEATHが、サブスクを解禁した。
これはパンク好きの間で中々ざわついた事件でした。
この解禁に際し、代表取締役社長であり、自身もHi-STANDARD/Ken Yokoyama/BBQ CHICKENSという3つのバンドとして所属している横山健さんは、サブスクを解禁した理由をこう述べています。
ピザオブデスレコーズの音源をサブスクリプションで聴けるようにします。
6月21日に WANIMA のピザからリリースしたタイトルからサービスを開始し、近々に全タイトル聴いていただける環境を提供しようと計画しております。
レーベル=音源制作の会社として複雑な思いはありますし、平素より当レーベルを応援して下さっている皆様の中にも同じく複雑な思いを抱かれる方がいらっしゃると思います。
これもひとえにバンドの可能性を広げるための判断だとご理解いただけるとありがたいです。
ピザオブデス代表取締役 横山健
(引用元:サブスク開放特設 | PIZZA OF DEATH RECORDSより引用)
短い文ではありますが、この文面からも健さんがこの解禁に際し悩みに悩み抜いて決めたことだと、ファンならば分かっていただけるはずです。
ただ、これだけ言うならだれでも出来ますが、僕が言いたいのはここからです。
このサブスク解禁に際するずっと以前
健さんがサブスクに対する自身の想いを語っていたというのをご存知でしょうか?
これは知らないという方、多いと思います。
当たり前です。
何せ4年前、それもCSの特番でしか語っていなかったので。
当時、そこまで気には留めていなかったことだったのですが、ふと最近、そういえばこんなこと言ってたよな、と思い出し、改めて録画しておいたものを見直してみると、先ほど挙げた健さんのこのコメントは、相当悩みに悩んで出した答えだというのを改めて感じました。
もちろん動画アップロードという違法な事はせず、文字起こしという形で今回、多くのPIZZA OF DEATHファン、そしてパンクファンの方に知っておいてもらってほしいと思い、こうしてキーボードを叩いています。
2020年4月22日追記
本日この文面を追加している数分前に、PIZZA OF DEATHのアーティストの全100タイトルのアルバムやシングルがサブスク解禁されました。
コロナウイルスの自粛に伴うところもあるのでしょうが、それでも遂に来たか、というのが一音楽ファンからの感想です。
これまでレンタルがなかったアーティストも数多くいるので、ぜひこのタイミングでPIZZA OF DEATHの色々なアーティストに触れてみてくださいね。
どの番組で言及していたのか
その番組というのは、『帰ってきた(3回目)居酒屋けんちゃん』という、SPACE SHOWER TVというCSの音楽チャンネルで組まれた特別番組でした。
横山健さんが居酒屋の大将となって、嫁兼アルバイト(という設定)のRioさん(元AV女優)とアルバイト(という設定)のMakkin(GOOD4NOTHING)の2人と共に、ゲストでやって来る音楽関係者の方と様々なことを語り合うという一時間のバラエティ番組でした。
そのやって来る音楽関係者の面々も幅広く
・綾小路翔さん(氣志團)
・田村淳さん(ロンドンブーツ1号2号/jeaklb)
・山口隆さん(サンボマスター)
・谷中敦さん(東京スカパラダイスオーケストラ)
・RYO the SKYWALKERさん
・小野島大さん(音楽評論家)
という、豪華な面々の方々と、色々な話のお題がメニューとして掲げられており、そのメニュー(お題の内容)から政治の話、はたまた男の〇〇〇(ここ聞きたい人はTwitterのDMで教えてあげるから連絡を!)など、音楽だけに留まらずかなり幅広いトークを繰り広げています。
どのタイミングでその話題が出てきたのか
それは、番組の序盤の終わりころ、サンボマスターの山口さんと音楽評論家の小野島大さんとRYO the SKYWALKERさんが出てきたときに、じゃあせっかくだからということで、健さんが『サブスク』というお題を取り上げたのです。
この番組が放送された時は2015年であり、今では当たり前のSpotifyもまだ日本ではサービス開始をしておらず、Apple Musicがサービス開始した当初の頃でした。
そのため、小野島さんもものすごく丁寧にサブスクとは何ぞや、どうやって音楽を聴くのか、ということを一から語っておりました。
それに対し、同席していたRYO the SKYWALKERさんは便利ではあるけど、当時無料キャンペーンで各社色々やってるけど、有料になったときに使う人にとってそれが安くなってくるか高くなってくるかどうかと危惧しており、サンボマスターの山口さんは当時Apple Musicを使っていた時に情報量の凄さに驚いたということ、小野島さんは当時配信をしていない洋楽のアーティストで人気の方がやっていないのはアーティストに還元される額が少なくて、人気がある人はともかく無名の人はこれでは食っていけないから僕らはやらないという、何らかの明確な理由があってやらない等、アーティスト側・音楽評論家側それぞれの意見を語っておりました。
それに対し、健さんが語ったこと
これらを聞いて、サンボマスターの山口さんは健さんはどうなんですか?と聞いた後、健さんはこのように語っていました。
ここからは、健さんが語ったことを引用し、書いていきます。
(引用元:帰ってきた(3回目)居酒屋けんちゃんより)
その意見に加え、さらに議論が深まっていき、小野島さんは音源では食っていけないからプロモーション用のツールとして使っていくしかない。例えばライブの物販にCDがある。音源の存在感が10年前20年前と違っている。音楽の聴き方からもう名盤と呼ばれるものがなくなっていく、ディスクがなくなっていってこれからの若い子はアルバムという存在をどう捉えていくかなど、さらに深い議論になっていきました。
その盛り上がっている中、山口さんが再び健さんに話を振り、PIZZA OF DEATHの代表である立場としてはこういう問題は結構大きな問題だと思いますけど考えてらっしゃることはありますか?と質問をしました。
ここもノーカットで、健さんの回答をを引用させていただきます。
(引用元:帰ってきた(3回目)居酒屋けんちゃんより)
その健さんの発言の後、山口さんが小野島さんにこれでミュージシャンに音源制作が出来るだけのものが貰えるのかと聞くと、何百万回も再生されないと元は取れないと語り、だけど聞く側にとっては決して悪いことではなく、その分をライブのグッズで賄う方針に変えていくのか。こんなにいいサービスだけど音源に対するありがたみは薄れている。世界中でCDが売れている国は日本だけで海外からすればCDなんてとっくに終わったものでサブスクリプションが当たり前で、RYO the SKYWALKERさんもジャマイカの人から日本人はまだCD聞いてんのか?と言われたなど、それ以降も更に盛り上がり、放映時間は短かったですがその話の熱量はかなりのものでした。
これが、健さんがサブスクリプションについて語っていたことの、大まかではありますが抜粋となります。
この番組から4年経った今、改めてサブスクリプションの現状を振り返る
この番組が放映されて4年経ちますが、その間音楽の聴き方というのは劇的に変化しました。
このサブスクリプションサービスは開始してから瞬く間に音楽業界を席巻し、今では音楽を飛び越し、ファッションなどでもサブスクリプションサービスが開始されるようになる等、今ではどの業界でもサブスクリプションサービスは当たり前となり、同時にサブスクという言葉もかなり浸透してきました。
そしてこの4年の間にサブスクで音楽を聴く、という行為は多くの方に支持され、今やとりあえずそこを漁ればなんでも聞ける、というようになっています。
ただ、未だにサブスクリプションの1再生当たりの単価はかなり安いものです。
こちらの方のブログに大手ストリーミング配信サービスの1再生あたりいくら支払われるということが事細かに明記されております。
1番高いのはApple Musicの1.2円、続いてLINE MUSICは1円ですが、ここから先は1円すら切り、僕が今唯一月額会員となっているSpotifyは0.4円と、とてつもない安さとなっており、こんなんで仮に10万回再生されたとしても、大手アーティストからしてみれば正直大した額ではないでしょう。
ましてや、これが無名のアーティストならば、もっと再生数は少なくなり、収益を上げることは不可能でしょう。
ならばなぜPIZZA OF DEATHはここに入っていくのか
ここからは、あくまで僕の自論となるため、気分を害されるファンの方がいらっしゃるかと思いますので、もしそうなってしまった場合は大変申し訳ありません。
ではなぜ、PIZZA OF DEATHがこのサブスクリプションに飛び込んでいくかというと、最初に書いた健さんのコメントにある
バンドの可能性を広げるための判断
の一言に尽きると思うのです。
今年、PIZZA OF DEATHは目に見える変化を打ち出してきました。
それは、2つの新たなバンドをファミリーに迎え入れたということです。
1組目は、ライブハウスだけでなく、路上でもライブ活動を行うなど、他のバンドと一線を画す活動を行ってきたロックバンド『Suspended 4th』
2組目は、メロディックパンクシーンで熱い支持を受け、海外パンクシーンのバンドとも数多く共演してきたバンド『COUNTRY YARD』
WANIMA以降、PIZZA OF DEATHは新しいバンドを擁することはなかったため、実に5年ぶりとなる新しいバンド、それも2組も迎え入れることとなりました。
ただ、この2組はPIZZA OF DEATHに所属する前から、サブスクでこれまで発表してきた楽曲を解放していました。
これに触発された、といえば簡単でしょうが、おそらくそれまでにもそういう話はPIZZA OF DEATH内部でも出てきていたとは思うのです。
ただ、まさに健さんが番組内で語っていた、変に動きたくはないという言葉通り、なかなかそこまで踏み込む踏ん切りや、タイミングが掴めなかったのではないかと思います。
そんな中、新たに2組のバンドを迎え入れたということは、当然その2組をアピールしていかなければならないはずです。
そこで、この2組は元々サブスクで配信しており、これから生み出されていく楽曲も多くの方に広げていきつつ、他にもPIZZA OF DEATHにはこんなバンドがいるんだよという、見本市ではないですが、1人でも多くの音楽ファンに知ってもらういい機会だと判断し、この度サブスクを解禁したのだと、僕は思っています。
と、こう書けばそれまでですが、これだけでなく同時にPIZZA OF DEATHは、もっと大きな視点で見て解禁した、とも思っているのです。
これはPIZZA OF DEATHのバンドのファンならば分かってもらえると思いますが、在籍しているバンドの多くが基本フェスには出ず(決して人気がないわけでは((ry)、自分たちでイベントを行うバンドが数多くいます。
そうなると、ファンならばその動向を注目しますが、PIZZA OF DEATHのファンでない子にアプローチしていくのはとても難しく、かつそのイベントに出るバンドもまた、同じようないわゆるアンダーグラウンドのバンドが数多くいます。
なので、今回の配信はひとえにバンドの可能性を広げるための判断というの健さんの言葉は、PIZZA OF DEATHのバンドだけでなく
シーンにいるバンド達そのものの可能性を底上げする要因にもなる
と僕は感じているのです。
どういうことかと言うと、例えばアーティスト主催のフェスやイベントで、知らないバンドがいたとしたら、予習としてそのバンドをYouTubeやらなんやらで聞くとします。
そこでたまたま気に入ったバンドがいたらもっと掘り下げていき、ライブ当日そのバンドを見てファンになる。そしてTwitterやFacebook、Instagram等でそのバンドのメンバーをフォローし、新しいライブ情報を見る。そしてまた知らないバンドがいたら予習する。あるいは初見でハマる。そしてまた次はそのバンドに・・・と、無限ループではないですが、そういった経験、音楽好きなら誰しも一度は経験あるかと思います。
多分、当事者はただ好きで掘り下げているだけなのでしょうが、僕としてはそれがある意味シーン全体のサポートに繋がっているはずだと思っているのです。
だからこそ、PIZZA OF DEATHはたとえストリーミングで収益があまりなくとも、シーン全体の底上げに繋げていくために、こうしてサブスクを解禁したのだと、僕は思っています。
長くなりましたが、PIZZA OF DEATHがサブスクを解禁し、現在はWANIMAとSuspended 4thのアルバムだけですが、今後はKen YokoyamaやGARLICBOYSやMEANING、そしてPIZZA OF DEATHのモンスターバンドであるHi-STANDARD。さらにPIZZA OF DEATHに在籍していたけど離れたアーティスト達のアルバムも続々解禁されていくはずです。
そうなった時、このシーンのフォロワーがより多くなっていき、あそこのシーンにいる人たちはカルチャーを作っており、他の人が見た時にめちゃくちゃカッコイイ人たちしかいない。
そんなシーンが生まれていくことを、1PIZZA OF DEATHファン、いやそのシーンの音楽のファンとして願っています。
それでは。
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