THE SUN ALSO RISES vol.225 Age Factory COUNTRY YARD F.A.D横浜 ライブレポート

今日は、自分達で言うのもあれですが、完璧な対バンだと思います。
COUNTRY YARDのボーカルのKeisaku “Sit” Matsu-ura(以降Sitと表記する)は最初のMCでそう口にした。

実際、それは間違いなかったと、この日来ていた全員思っていた。はず、ではなく、間違いなく、そう思っている。
そうじゃなかったら、両バンドのライブ中、それぞれのバンドTシャツを着た人が、ダイブをする。それも、相当な数が。そんなの、完璧な対バンライブと言わずして何と呼ぶって話じゃないか。

 

横浜の老舗ライブハウス、F.A.D横浜にて、2012年から始まり、定期的に開催がなされている、2組のバンド・ミュージシャン・アーティストによる名物ツーマンライブイベント【THE SUN ALSO RISES】

名物、と書いたように、タイトルにも書いてあるのだが、vol.225というように、今回この企画は225回目の開催となる。(ちなみに既にもう236回目までの開催が決まっているため、このペースで行けば、来年には記念すべき300回目を迎えるかもしれない。)
そんなコンスタントに開催されている本企画に、筆者も初めて参加したと同時に、初めてF.A.D横浜に行けることになった。

 

F.A.D横浜は、これぞライブハウス、といった雰囲気がヒシヒシと出ており、むき出しの配線やエアコン、壁の至る所に貼られたフライヤーや出演者のパスなど、ここで数多くのライブが行われてきたのだというのが、否が応にも目に入ってくる、まさに老舗の、ライブハウス、と誰もが想像するような、これぞライブハウスという店構えだ。

そんな今回は、既にタイトルにもあるように、Age FactoryとCOUNTRY YARDという、熱いライブに定評ある2バンドによるツーマンライブが行われた。

先にも話したが、今日は完璧な対バンだと思いますとSitが言っていたように、チケットは早々にソールドアウト。
これはもう、演者だけでなく、見ているこちら側も、今日は絶対この組み合わせは間違いない。この対バンを待っていた。そう直感で感じた、センスのある、音楽のアンテナ感度の高い人ばかりが参加をしていた。

 

偶然にも、ちょうどこの日はベースの日だった。だから何だ、というわけではないのだが、バンドにとってベースは必要不可欠な存在であり、バンドを支える屋台骨的な存在だ。

そんなベースの日に、ライブ数あれど、間違いなくここを選べば正解、と言えるようなライブだった一夜をレポートしていく。

 

先方を務めたのはCOUNTRY YARD。

Quarkのイントロが鳴らされた瞬間から、あっという間にピットが生まれ、ダイブとモッシュ溢れる、これぞライブハウスという空間が生まれる。
更に立て続けにStarry Night・Tonight・I’ll Be With Youと、新旧の代表曲を間髪入れずに鳴らせば、4曲だけだが、前方の熱気は凄まじいことになり、寒い日であったのだが、ライブハウスの中だけは夏日だ。

いい一日にしようと、横浜、ひいては神奈川という海のある県の、横浜という海に近い街だからということで、最新アルバムの中から、キャリア史上初の試みとなった日本語詞を取り入れたUmiでは、それこそ穏やかな海のように揺らぎあるサウンドで、一度トーンダウンさせた、かと思いきや、その後に来たIn Your Roomの爆発力たるや。
この曲はライブハウスに来ている一人一人の歌なため、Your、という一人称がついているものの、聞いている限りは、Yours、という複数名称な言葉な歌なのは間違いないのだが、ここにいる全ての人達で1つの空間を作っているとも思える。ならば、Yourと称するのは正解なのかもしれない。なんてことを思っていると、ここからはCOUNTRY YARDの深化、とも言える新境地的な楽曲が続く。

 

パンクというより、サウンド的にもどこかカントリー的な要素があり、まるで目の前の景色がどこまでも広がっていくような、心地良いサウンドであるRiverから、日本のバンドでこんなメロディを思いつくのかと発表された当時驚いた、キレのあるカッティングながら非常にリズミカルであり、かつこの日は天気としては、あいにくの曇りだったのだが、それすらも楽しみに変えてしまえるような、ワクワク、ではなく、ウキウキ弾んでしまうようなPurple Daysと、この数年でパンクシーンにいつつも、そこから飛び出していき、新たな音楽境地へと進んでいったCOUNTRY YARDの今の立ち位置を表現するかのような楽曲が続く。

 

そんな静と動、のような、緩急つけた楽曲群にフロアも時には暴動のように暴れもすれば、横ノリのようなフロアになる。
そんなフロアを見てか、ギターのyukiは俺も昔セキュリティしてたことあるんだけど、あれイラつくんだよね。痛いし皆のパッションを受け止める1番最初の役割だし。と、今日この場所で同じように、ダイブしてくる人をキャッチしてくれるセキュリティに対して、昔自分もそうしていた日々を思い出しつつ、でも、安全に下ろしてくれたらありがとうとか、悪いことしたらごめんなさい。って言ってください。いいライブは皆で作るって言うけど、悪いライブも皆が作っちゃうから。と、誰かに対して怒るわけでもなく、両方のファンで共にいい時間を作っていこうとする。今日この時間をとても大切にしようというのは、ファンだけでなく、バンド側も同じ気持ちだ。

 

前にも一度、2年ほど前に奈良でツーマンをやったことをフロアから指摘されると、その記憶力に凄いねとSitは驚きつつも、この前は奈良で今度は自分達のホームである八王子や町田に近い、横浜でライブが出来て嬉しいと、またこの対バンライブが出来たことに喜びを感じており、はじめましての人もいるかもしれないし、今日が最後になる人がいるかもしれない。でも、今日の出会いがいい出会いになればいいと思いますと、自分達のファンだけでなく、今日初めて出会うことになったAge Factoryのファンに対してもまたの再会を願い、俺達がCOUNTRY YARDだ、とボソリと、それでいて気合いをまるで自分にも入れるかのように一言言うと、Bedからライブを再開させる。

スローテンポな曲ながら、厚みが深いサウンドは、バラードともまた違う、エモーショナルに、かつ重厚感があるサウンドは、まさにCOUNTRY YARDならではだ。
そんなしっとりとしたエモーショナルなサウンドから、Smiles For Milesでは打って変わり、開放感あるようなカラッとしたサウンドで会場の色を一瞬で変えていく。

 

これだけ多種多様に色々なサウンドを繰り出していると、日本人離れ、と言いたくなってしまうのだが、個人的には、日本人っぽくない音を出していると思うのだ。
パンクやオルタナティブと表するのが、カテゴライズで括るとそうなってしまうのだが、今はもう、どのバンド、と例えられるものでもなく、COUNTRY YARD、というジャンルとして既に確立している。
なので、メロディックパンクバンド、と、音楽が好きな人が思いつくようなサウンドとはまた異なるサウンドを鳴らすその様は、もはや一言で括ることが出来ない。

そんな多種多様なサウンドを繰り出しつつ、観客もまた都度それに応える。こういったサウンドを鳴らすバンドに着いているファンは、自分も含めだが、音楽の感度が高い、と勝手に思うし、こんなバンドは日本では先に中々いなかったよな、と。
故に、後輩バンドでもフォロワーが数多くおり、今やもう、パンクシーンではある種草分け的存在にもなりつつある。

 

高速カッティングが特徴的ながら、この日一番エモーショナルに、ダイナミックに体を動かして演奏したStrawberry Days。1stアルバムからは久しぶりとなるChasingと続け、最後に今一度の感謝を伝えると、ラストには、今のCOUNTRY YARDを象徴するような、MVが公開された当時、キャリアとして初となる日本語詞での楽曲となったが、日本語だからこそ、ダイレクトに感情が伝わる、Dokokaを万感の想いで歌い終え、先手ながら、フロアを温めに温め、Age Factoryにバトンを渡した。

 

COUNTRY YARDが温めに温めたフロアの熱を冷まさないように、セット転換をすぐに終え、後攻であるAge Factoryが登場すると、SKYからライブをスタートさせ、1994・向日葵と言葉もなく立て続けにプレイする。

ギターを一度置き、ピンマイクでCLOSE EYEを歌えば、ストロボのように点滅する証明がピッタリ合うのは当然だが、次に何が起こるかわからないから、瞬きする間も勿体ないと思ってしまう。

そんなバンドを引っ張る、ボーカルの清水エイスケの、骨太で、ダウナーで、ギラついていて、軽く触れればこちらが怪我をしてしまうような歌声は、ゴリゴリのロックサウンドもそうだが、ミクスチャーサウンドもよく合う。

今年発表したシングルのParty night in summer dreamでは、ベースの西口直人のサウンドが前に出て楽曲を引っ張っていく一方、エフェクトを付けたマイクと、通常のマイク両方で歌うため、HIPHOPシーンのようなサウンドに、Age Factoryの武器である、骨太なロック要素も混ざり合った、彼らなりのハイブリッドなロックに仕上がっている。

 

今年のAge Factoryは、新曲を4曲も既に発表しており、これまでとはまた違う、新たなバンド像が見え始めており、かつそれが無理せずに自然体で出来ており、違和感もなく、それでいて、いい、と素直に思える。
COUNTRY YARDもそうだったが、このコロナ禍で新しい領域のサウンドに挑戦し、結果それが上手くいっていて、既に持っているものはそのままに、新たな自分達の武器を手にして、それを使いこなしている。
音楽的には異なる両者であっても、核の部分では共通しているものがあるからこそ、Sitは完璧なツーマンだと言ったのだろうと。

 

ダイブをやりたかったらやればいいし、したくないならしなくていい。俺だって人間だから不機嫌になることもあるけど、でも今日皆でいい1日になるように楽しみましょう。
と、今日この日、ちゃんとしたMCはこれだけだったが、それでもこの日にかける意気込みや、今日この日を楽しみにしてきたのは来たお客さんだけでなく、バンド側も同じだった。

故に、時計を見ないでと歌うDance all night my friendは、今日この日を楽しみにここに来た誰ものことを歌っているかのようであり、自然と手が上がり、温かい空気が会場を包んでいく。

先程、COUNTRY YARDは地元に近いところでやれて嬉しいと言っていたが、そのAge Factoryの地元である奈良のことを歌ったMerry go round。
Light offでは、The BONEZ/RIZEのJESSEのパートを自ら歌い、原曲とはまた違う、ライブに足を運んだからこそ見れる・聴ける姿を見せ、Everynightでよりエモーショナルな空気を作り上げていく。

 

そんなゆったりとしたエモーショナルなコーナーから一転、再度加速をかけるかのようにTONBOが始まると、フロアからは大合唱が起き、必然的にモッシュもダイブもこれまで以上に起こり出し、その勢いのままにSee you in my dream・WORLD IS MINEと続けば、もはやこの勢いは誰にも止められない。
今日は夢を現実にしようと一言言うと、Age Factoryの名を多くの人が知ることになったきっかけとも言えるGOLDでは、更なる盛り上がりを見せ、感情的には頂点とも言える場所まで辿り着いた。

 

そんなガッツリとした盛り上げるゾーンから一転して、今のAge Factoryの居る所ですと清水エイスケは一言言ってから、今のAge Factoryの立ち位置はこうだと示すが如く、これまでにないテンポ感と、バンドとしてスケール感をより拡大させつつも、歌詞からは初期衝動を感じさせる。そんな新曲であるBlood in blueを歌うと、先程とは違った熱量高い盛り上がりとなった後、ラストにはこの、横浜という海が見える場所だからこその、HIGH WAY BEACHで締め括った。

 

鳴り止まないアンコールを求める声に再度登場したが、これはあくまで見ていた一個人の意見になるのだが、スタッフの動きや会場の空気、のようなものを第六感で感じたのだが、おそらくHIGH WAY BEACHまでで、今日のライブは終わりだった気がした。
なのでこのアンコールは、予定されていたものではなく、求められたからこそ出てきたアンコールだったと感じている。

 

故に、言葉もそぞろに、ラストには、COUNTRY YARDが今日演奏したのだが、Age Factoryにも、同じタイトルの曲がある。故に、それをやらないかと期待する人も多かったが、曲名を言ったと共にわっと歓声が上がった、待ってましたのRIVERで、もう一盛り上がりを見せ、2年振りのこの2バンドによるツーマンライブが終わった。

 

終演後、SNSを見ていたら、今日片方は初めて見たけど、もっと早く知っていたかった!という感想も見受けられ、まさに対バンならではの醍醐味がここにはあった。

勿論それは2バンドがカッコいいという最大の理由があるのだが、何よりも、F.A.D横浜がずっとこのイベントをコンスタントに続けてきたからこそ出来たことであり、こういった2マンライブイベントを定期的に開催するライブハウスというのは、実はそう多くない。
だからこそ、このイベントを企画し、続けていることにも感謝しかなく、かつ、ライブハウスシーンを最前線で見続けてきているF.A.D横浜で働く方が、この2バンドなら間違いないと選んだからこその、素敵な一夜となった。

そして実際、ファンもまた、今日これがいい出会いになった、という人もネット上でだが数多くいた。
無論、それは自分もであり、COUNTRY YARDは何度かライブは見ていたのだが、ライブを見るのはなんと8年振りだった。Age Factoryに至っては、これが初だった。

だが、どちらのバンドも見る前からわかっていたのだが、素晴らしいライブをしており、対バンライブの醍醐味・真骨頂を見たと勝手に思っている。

 

故に、この完璧なツーマンを、2年と言わず、もっと短い期間でまたやっていただきたいと願っており、かつ、F.A.D横浜にも、このライブイベントを可能な限り、長く続けていってほしいと、心の底から願っている。