SHADOWS『torches』のインタビューは音楽に携わる者全員が見るべきだ

2018年11月30日

一昨日ですが、当ブログでも度々紹介しているSATANIC CARNIVAL。

その主催であるPIZZA OF DEATHの有料モバイルサイト、SATANIC entに、過去本ブログでも書いたロックバンド『SHADOWS』のニューアルバム『torches』のインタビューが特別無料公開されました。

肝心の内容なのですが・・・はっきり言わせていただくと、アルバムの内容に関しては”ほぼおまけ”程度に話しています。

それよりも、今回の販売形態、それを実行した本人達がどうしてそれを実行したかに重きが置かれ、SHADOWSのファンだけではなく、ロックという音楽が好きな人。ひいては製作者や流通業者全員が1度は読むべきインタビューではないかと感じました。

それ程までに深いインタビューであったので、今回こちらを僕なりの考察を交えつつ解説していきます。

このジャケットの色は今後も変わっていくそうです ©maximum10

ニューアルバム『torches』、その販売方法

まず、このアルバムについて説明すると、このアルバムは、ニューアルバムですが、CDショップ・通販・配信、そのどれでも買うことが出来ません。

唯一の購入方法は、SHADOWSのライブへ行ってその物販で買う。
これだけです。

これには当初賛否両論が起こっていましたが、今回のインタビューではそれを決行した理由について、1つの案だと語っていました。

次からは、それらを決行した理由を1つずつ上げていきます。

ライブ会場限定販売にした理由

SHADOWSのファンへのアプローチ

SHADOWSの事が好きなファンが力ずくで手に入れる。
まずはここから始まっています。

インタビュー中にもありますが、CDを買ってもパソコンに取り込んでしまうとあります。
僕もそうなのですが、確かに買ったCDを最初はCDプレーヤーで聞きますが、パソコンに取り込んだらその後またCDで聞くことはあまりしないです。

更に今の時代、CDを買わずとも様々な手段でアーティストの楽曲を聞くことが出来ます。
なので、CDを買うという行為から離れている、あるいはCDを買わないというファンも多いかと思います。(決して配信サイト等を否定している訳では無いです)

なので、そういう流れの中で、本当にSHADOWSの音楽を求めているファンに届けるために今回この様な手法を取ったというのが、原点回帰でもありつつ画期的だと感じたのです。

バンド、もっと言うとアーティストが無名の頃、CDを全国販売することなんて当然ながら出来ません。
そんないわゆる無名なアーティストは、常にCDを焼いて物販で売るということをしています。

このインタビュー中にもありますが、いいライブをした時にはその会場で音源が売れた。それが凄く嬉しかったと語っております。
そして、これが売れてるよ。ではなく、これが欲しいという一番初めの感覚に戻りたいという感覚になった結果、今回の販売方法に行き着いたのだと思います。

実際、SHADOWSの初ライブとなったPUNKSPRING 2016というイベントに出演した際、持っていったCDが全て売れたということもありました。
もちろん、それ以前に彼らがFACTだった頃から得た、手ごたえとも言うべき自信があったからこそ、今回この決断に踏み切ったのだと思います。

ただ、ライブ会場限定シングルというのは、他の様々なアーティストも出していますが、ナンバリングとも言える2ndアルバムを会場限定販売するというのはおそらく前代未聞でしょう。
そこにまた、SHADOWSの狙いがあります。

流通の”外側”へ立ってみる

まずは、こちらのサイトをご覧ください。
著作権のお金の流れ

これは、音楽主義というフリーマガジンの公式サイトに掲載されているものであり、最初の画像にCD一枚当たりの内訳が掲載されています。

これを見てわかりますが、アルバムの定価を3000円とした場合、流通だけで約半分は持っていかれてしまうのです。
そして、レーベル分や印税、著作使用料等で更に持っていかれていき、最終的にアーティストに入る印税なんて見てわかる通り、雀の涙と言わんばかりの額になってきます。

あくまで、メジャーレーベルの場合と注意書きがありますので、インディーズレーベルだとまた変わってくるかもしれません。
ですが、インディーズアーティストでもCDショップをはじめ、通販サイトその他諸々、様々な形で自分たちのCDを販売しているアーティストは多いため、流通の面で流れるお金はほぼ変わらないかと思います。
更に、このCDが売れない現在で、果たして販売してもどれほどが制作費として来る、いや戻ってくるのでしょうか?
そんな事を考えると、お先真っ暗と言えるような状態ではないでしょうか。

こんな状況に、SHADOWSは一石を投じようとしているのです。

まず、販売方法をライブ会場のみと限定することにより、単純に考えると先ほど上げた流通のコストを浮かすことが出来るはずです。
そうすれば、単純計算ですが1400円分が浮きます。

それだけでも、アーティストはもちろん、制作陣にもお金が回っていくはずです。
そうすれば今後、新しい音楽を生み出す環境と資金面が整い、またアーティストとエンジニアにも必然的にお金が入っていくはずでしょう。

インタビュー内でも語っていましたが、
CDが売れないとなると・・・
制作費が落ちない→レコーディングにお金がかけられない→レコーディングエンジニアに金が払えなくなる・・・という負の連鎖になってしまう

と語っています。

CDが売れないのが当たり前の現在。
その流れをどこかで変えなければならないために、こうしてSHADOWS、そしてレーベルのmaximum10全てが協力し、1つの盛大な実験に取り組んだのです。

このチャレンジがうまくいけば、モチベーションや制作へのクオリティを保ち続けられると語っています。
実際、今回のツアーでtorchesの第1回目の生産分は完売したとツイートしていたので、とりあえずは成功だったと言えるのではないでしょうか?

今回は第1回目の生産分だったので、来月から始まるtorches tourでおそらく第2回目の生産がかかると思いますので、その時に今回買えなかった人はもちろん、今回のツアーで買った人もアルバムのジャケットの色が変わると予告しているので、コレクター的に全部集めるというのも大いにありでしょう!
(6月23日追記)
SATANIC CARNIVAL2018より、サムネイルのアルバムのジャケットがイエローからレッドに変わった第2弾が発売開始されました。

このアルバムの今後

このアルバムは今後もまたライブ会場限定で販売していく予定であり、まだ今後どうしていくかは未定と語っています。

欲しいやつはその日1日だけでも休んで買いに来いと本人たちも言っています。

ただ、それでもやはり、様々な問題でどうしてもライブに行けないという方も大勢いるでしょう。

これは、あくまで僕の中での考えなのですが・・・

そんな欲しいけど来れない人がいたら、葉書や手紙などをレーベル等に送り、その文面から熱い熱量を持った方だけが買える
という仕組みにするのはどうかと考えたのです。

これは昔、Hi-STANDARDやKen Yokoyamaで活躍する横山健さんがアコースティックギターツアーを行った際に、葉書を送ってもらって、内容に目を通させていただいた上での抽選という方法を取ったことがあります。
その結果、本当に観たいという熱量を持った方が来て、かつデジタルな時代に一手間かけることの大事さを痛感させられたとコラムで語っています。
この内容は、横山健さんのコラムをまとめた『横山健 随感随筆編』に掲載されているので、詳しく読みたい方はそちらを読んでみてください。

そのように、一手間かけて本当に欲しい!でも行けない!けどやっぱりアルバム欲しいんだ!!
という方のために、期間限定で送る場所を作り、そこにファンがこのアルバムが欲しい!という思いの丈をひたすらに書いて送る。
そして、その文を本人たちが目を通し、こいつにはアルバム買わせてやるか!となった方に、当選葉書を送り、買える・・・という仕組みはどうだろうかと。

こうすれば、来れない方でも買えるチャンスがあり、またこんなところに熱い熱量を持った奴がいるんだなと向こうも知ることが出来るため、ひょっとしたらこんな熱いやつらが沢山いるなら、ライブしに行ってやるか!と向こうも動いてくれるかもしれません。

もちろんこれはあくまでも僕の想像であり、本人たちはどういうことを考えているかはわかりません。
ただ、これもあくまで行くと同様、いやそれ以上の熱量のあるやり方ではないかなと考えたのです。

(追記)
現在、SpotifyやiTunesなどのサブスクリプションサービスやデジタル配信で買うことや聞けるようになりました。

ですが、今はやはりライブに行くしか手段がありません。転売で買うなんてもっての外です。

僕は先のツアーには行けなかったので、次のtorches tourには必ず参加し、このアルバムを手に入れたいと意気込んでいます。

このブログが、そんなSHADOWSのファン、そしてそこまでファンじゃないけどアルバム買いに行ってみようかな?と気を動かせたなら幸いです。

それではまた。

音楽

Posted by naishybrid