AV新法はなぜ問題になっている?その問題を解説

※あらかじめお伝えしておくと、タイトルにもありますが、今回はAV新法の話です。
ただ、本記事ではこの法律がなぜこんなに作る側から不満や問題が起きているか、ということについて説明をしていくため、いわゆるそういった性的・アダルトな話は一切しません。ということをあらかじめお伝えし、本記事に入っていきます。※

 

今年の6月、記憶にも新しいかと思いますが、AV新法という法律が新たに制定されました。

一見すれば、そういう法律が出来たんだな、と思いますし、別に特段問題ないのでは?と思う方がほとんどでしょう。

 

しかし、この法律に対し、現在活躍されているAV女優や作品を作るメーカーなど、業界関係者から反対の声が上がり、先日には、AV女優の方が自ら街頭に立ち、ビラを配り、この法律の問題についての認知度を上げるための活動をしました。

 

正直に言いますが、こんな活動、僕は初めて見ました。

これは偏見だということは重々承知していますが、いわゆるこういった女優さんが政治的な話をされていることなんてあまり見たことがありませんでしたし、むしろそういった方を見たことすらなかったです。

しかし、声を上げるどころか、街頭に立ちビラ配りまでし、この問題認知に取り組むというのは凄いことであると同時に、この法律がどれだけの緊急事態なのかということを如実に表していることの裏付けともいえるでしょう。

 

正直、自分も当初はなんとなくとしか思っていなかったのですが、ふとそういえばこの法律ってあったけど、何が問題なの?と気になり調べると、確かにこれは問題しかない法律では?と思ってしまったのです。

正直、こういった話ですのでなるべく避けようかとも思っていたのですが、言ってしまえばこれは当ブログでも度々取り上げているライブハウス問題に近い、いわばエンタメへの規制となんら変わらないと思い、こうしてブログを書いております。

僕の想いについてはあとがきで書きますので、次から、このAV新法がなぜ問題なのかを紹介していきます。

そもそも、AV新法ってどんな法律?

前提として、先ほどからずっと話しており、今回の記事のテーマでもあるAV新法とはどんな法律なの?ということについて簡単にですが説明をしてまいります。

 

まず、そもそもの正確な法律名は『AV出演被害防止・救済法』となります。

 

この法律について、内閣府の内部部局である男女共同参画局が、本法律のポイントを列挙しておりますので、以下に引用させていただきます。

・契約締結時には、契約書等を交付し、契約内容について説明する義務があります。
・契約してから1か月は撮影してはいけないこと、撮影時には出演者の安全を確保すること、撮影や嫌な行為は断ることができること、公表前に事前に撮影された映像を確認できること、すべての撮影終了後から4か月は公表してはいけないことを義務付けています。
・撮影時に同意していても、公表から1年間(法の施行後2年間は「2年間」)は、性別・年齢を問わず、無条件に契約を解除できます。
・契約がないのに公表されている場合や、契約の取消・解除をした場合は、販売や配信の停止などを請求することができます。
・性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センターで相談・支援を行います。
(引用元:AV出演被害問題について – 内閣府男女共同参画局より引用)

 

これらが今回施行された法律にこの内容が含まれております。

 

ここだけを一見すると、いや結局これの何が問題なの?と思うかもしれません。

次の項目から、この法律の問題をピックアップしていきます。

なぜこの法律が業界関係者から反対されている?

この法律がなぜ業界関係者から反対の声が上がっているかということについて、極端だということを重々承知で、一言で言うならば、このAV新法があまりにも実際の現場の流れや現状を全く踏まえたものではない法律になっている、ということです。

 

詳細について書きたいとも思うのですが、まずその前にはっきり言わせていただきますと、この法律の詳細について、実際にAV女優をされている『三宮つばきさん』という方がいらっしゃるのですが、その方が書いたnoteの記事が、実際の現場の温度感や雰囲気、そして業界の現状を踏まえたうえで的確にAV新法の問題点を書かれており、男性・女性どの方が読んでもとても参考になりますので、以下のリンクからぜひ、というか必ず読んでみてください。

その上で改めて、本記事でも問題点をピックアップし、解説していければと思います。

AV新法の問題点

適正AVではない手順で作られたAVと適正AVが同等に見なされている

先ほど紹介させていただきました三宮つばきさんのAVの真実という記事の中にも記載があるように、適正AVとその手順ではない過程を経て作られたAV(以下、本記事では分けるために非適正AVと呼称させていただきます。)があり、本来非適正AVに課せられるべき法律が、適正AVにも課せられているということです。

適正AVについては先ほど紹介したリンク先でも三宮つばきさんが丁寧に解説されてましたが、念のため、先ほどのブログ先で引用していた引用元であるIPPA・特定非営利活動法人知的財産振興会のWEBサイトにある、適正AVについてという項目から、適正AVとは?ということを引用させていただきます。

・適正AV
 成人向け映像(アダルトビデオ)の総称としては「AV」が一般には認知されているが、ここで敷衍する適正AVとは、プロダクション、メーカーが出演者の人権に適正に配慮された業務工程を経て制作され、正規の審査団体の厳格な審査を経て認証され製品化された映像のみをいう。無審査映像、海外から配信される無修正映像、著作権侵害の海賊盤及び児童ポルノは、適正AVの範疇には入らない。国内の法規制に則り、確かな契約を取り交わして作られ、著作権の所在が明確であり、指定の審査団体において審査され、業界のルールに従い且つゾーニングされて販売またはレンタルされ、映像の出演、制作及び販売・レンタルの責任の所在が明確なものだけを合法な適正AVと称する。なお、将来的には適正AV=AVとして社会認知されることを目指す。

(AV人権倫理機構 適正AV業界の倫理及び手続に関する基本規則 語句の定義より)
(引用元:IPPA | 適正AVについてより引用)

 

上記引用元リンク先ですが、リンク先では図解で解説しており、より適正AVについてわかりやすくなっておりますので、ぜひとも一度見ていただくことをおすすめします。

 

そのように、契約や審査団体の審査、働かれている方の人権や著作権など、様々な手順を踏まえたうえで作られているため、ただAV、と一言で括ってしまうのがおこがましいほど、その中身は実際とてもデリケートに作られているものだと感じられることでしょう。

 

なので、ここまで読めば非適正AVというものについて分かったかと思いますが、これらの契約や審査、人権や著作権などの手順が欠けているものが、当記事で言う非適正AVに該当・相当することになります。

その適正AVと非適正AVが同列に見なされており、どちらにも今回のAV新法のルールが課せられることとなり、適正AVを作っている現場は混乱しているわけです。

企画内容・出演者・スタッフ等、人員や作品を確保するための期間の長さや準備の期間が長い

このルールが適正AVを作っている現場にどう影響を及ぼしているか、ということをここからは解説していきます。

 

最初に書いたAV新法の2項目目の『契約してから1か月は撮影してはいけないこと、撮影時には出演者の安全を確保すること、撮影や嫌な行為は断ることができること、公表前に事前に撮影された映像を確認できること、すべての撮影終了後から4か月は公表してはいけないことを義務付けています。』というのが、大きな問題の一つであり、業界にとっての足かせとなっているのです。

 

撮影時には出演者の安全を確保すること・撮影や嫌な行為は断ることができること・公表前に事前に撮影された映像を確認できること。

この3つについては誰しもわかるとは思いますし、人権などを考えれば、これは法律で設定する以前の当たり前と言えるでしょう。

 

ただ、それ以上に契約してから1か月は撮影してはいけないこと・すべての撮影終了後から4か月は公表してはいけないことの2つが、大きな問題となっているのです。

 

契約してから1か月は撮影してはいけないことについてですが、何度もお話ししておりますが、三宮つばきさんのブログにて、この契約してから1か月は撮影していけない、ということが実際の現場だとどのような状況になっているかを記しておりますので、以下に引用させていただきます。

今まではその日の朝に現場に行って契約書を作成していました。
その契約書を作る前にプロダクションやメーカーとの何枚にもわたる別の契約書がありますので、作品ごとの契約書は撮影前に書いて差支えのないものでした。
作品の台本や内容は前もって共有されていますし、どんな撮影で何をするか、スタジオの場所、どんなセリフがあって男優はだれか、メイクさんや照明さんの名前まで明確に明記された内容がしっかり伝達されていましたから当日に作品ごとの契約書を書くことには何も問題がありませんでした。

しかしAV新法に従って撮影を1か月前から予定しなければならないとなると都合が変わっていきます。
契約書が1カ月前ということは脚本の発案やスタジオを借りることや制作陣を手配するのはもっと前から行わなければならない事になります。
(引用元:AV新法を変えるために皆にお願いしたい事|三宮つばき|noteより引用)

 

このように、あらかじめ前もっての手順が増えることで、それまでのルールでやっていたものに大きな変化があり、結果企画を立てる・スタジオを借りる・スタッフを手配するということにも、前もっての準備の時間が大きくかかるようになり、かつ、これまで一日に何十本もAVが出ている業界からしたら、そのルールを守るように動けば、これまでの制作スパンでは到底出来ず、結果として様々な方に影響を及ぼすというのは目に見えていることでしょう。

 

さらに、AV男優として有名な『しみけんさん』という方がいらっしゃるのですが、その方も今回のAV新法が男優側にどのように降ってきているかを自身のTwitterにて発信されております。

 

このように、この人必要かどうかわかんない・でも契約だから仕方ない。でも必要なかったらその日はナシで・・・って、おかしくないですか?

こんなんじゃどこかに行こうなどという旅行なども出来ないですし、もっと言えば、明確にこの日は休みがない。というような状態です。

 

度々言われており、おそらく男性なら目にしたことがあるかと思いますが、AV男優の数は、AV女優の数と比べるとはるかに少なく、人によっては何現場もこなさなければならない方も多くいらっしゃるとのことです。

そのため、当然ですが、現在のリリースぺースから考えれば、一日に何件も現場をこなす男優さんも少なくないことは容易に想像がつきます。

そんな中でこの法律が出来、単純に来月のこの予定を入れておこうとなったら、当然ですがバッティングなども少なからず出るはずであり、女優よりも男優のスケジュールの方が立てにくい、となる可能性があり、はっきり言えば、AV女優よりも、男優の方が被害が大きくなると考えております。

 

なので、この1か月というのは、たかが、と思うかもしれませんが、実際の現場の声を見てみれば、その実は1か月とは到底言えないです。

AVの販売スケジュールの大幅な変更により売り上げの削減になる

先ほど紹介していた2つの中にあったもう一つの項目であるすべての撮影終了後から4か月は公表してはいけないことですが、これもまた業界に大きな足かせとなっていることです。

 

もうこの年齢にもなって別にAVなんか見てないなんてカッコつけて言う必要もないので、別にそりゃ男なのでAVなんて見てますし、かつ、メーカーや動画サイトで新作のリリースというものも見たことも当然ながらあります。

その新作というのは、たいてい1か月前に今度の新作!という形で特集が組まれていることや、情報解禁になっておりました。

 

しかし、4か月公表をしていけないということは、例えば今撮影をしたら、その発表をしていいのは12月になります。

かつ、今のスパンで言えば、1か月前に新作の情報解禁となるスケジュールとなったら、発売はもう年を越して来年になってしまいます。

 

そうなってしまえば、単純に売り上げの損失になりますし、事実、見る側からしても4か月前に撮影した作品が新作・・・?と思わざるを得ないです。

なので、この販売に対する公開スケジュールにも、4か月期間を開けなければならないという、誰しもが納得する明確な理由がない中で決められたこの項目にも、問題があるとしか言えないでしょう。

 

というわけで、ここまでが、今回のこのAV新法に対する問題点でした。

おわりに

というわけで長くなりましたが、今回はこのAV新法について取り上げさせていただきました。

最後に、今回この問題について取り上げた理由や、この法律を変えるために行われていることを紹介して〆させていただければと思います。

 

そもそも、半ばアダルトな問題について取り上げることに対し、若干悩んでいた部分がありました。

当たり前ですが、アダルトな問題ですので、取り扱いは勿論、不快にさせてしまう可能性もあるかもしれないと思っていたのです。

 

ただ、AV新法って何が問題なの?と個人的にふと疑問に思い今回色々調べていく中で、これって実は、僕が好きである音楽やライブハウスに定められているような決まりに近い、不条理さを感じたのです。

そんな不条理な法律を目の当たりにして、悩みは一切吹き飛び、早く書かないといけないという使命感を持つようになりました。

 

この法律がこのまま変わらず進んでいけば、単純にこの産業が好きな人だけでなく、このAVという産業に興味を持ち、入りたいと思う女性の方の機会が奪われてしまうだけでなく、それを撮影するカメラマンやメイクをするメイクさん、ひいてはメーカーやプロダクションも廃業してしまう可能性も、決してゼロとは言い切れないとでしょう。

 

事実、すでにこのAV新法の影響を受け、この業界でやりたいという意欲を持った方であるにも関わらず、今回の法律でAV女優を引退せざるを得なくなった女優さんもいらっしゃいます。

 

はっきり言いますが、これは性産業諸々という話ではなく、誰かのやりたいこと・叶えたい夢を奪っていると言ってもいいのではないでしょうか?

 

もちろん、言わずともがなですが、半ば強引さや無理やり出演させられ、人権侵害に近い形で出演をされてしまう女性の方を守るという意味では、制定されるべきです。

ただ、そうして制定しても、実際の現場やIPPAのような審査団体など、いわゆる現場の声を聴かないまま制定されてしまったこの法律には、はっきり言って問題があり、法律によって働きずらくなるどころか、生活そのものに影響を及ぼすのであれば、はっきり言ってそんな法律意味がないと思っております。

それは、AV業界というものだけでなく、全ての仕事においてそうですし、単純に、基本的人権の尊重に反しているのではないでしょうか?

それらを踏まえたうえで、今回、こうして記事として取り上げさせていただきました。

 

では実際、どうしたらいいかと言えば、当然ですが一度決まった法律を撤廃するというのは相当難しいです。

かつ、先ほども話したように人権侵害に近い形で出演をされてしまう女性の方を守るという面では、この法律は必要です。

 

だからこそ、法律の一部改正を目指し、現在AV女優さんや男優さん、プロダクションやメーカー等が、オンライン署名サービスの『Change.org』で、オンライン署名のキャンペーンを行っております。

このように、誰もがさくっと出来る形で署名も出来ますので、今回の記事を読んで気になった方は、ぜひとも署名をしてみていただければと思います。

ちなみにですが、僕も署名させていただきました。

 

最後になりますが、今やAV女優さんは様々なジャンルに進出しており、中でも、AV女優やグラビアアイドル等で構成されたアイドルグループである恵比寿マスカッツはAVを知らない方でも、聞いたことがあるのではないでしょうか?

他にも、ファッション業界に進出されている方も数多くあり、事実、TwitterやInstagram等でも、女性の方から圧倒的な支持を受けるAV女優さんも数多くいらっしゃいます。

また、女性の方でもAVを見る、という方も増えつつあり、実際、以前某テレビ番組で、タレントの藤田ニコルさんも、暇なときにAVを見ていると話をしていたこともありました。

 

このように、今やAVというのはただの男が見るもの、だけでなく、それ以外の様々なコンテンツにまで波及するほど、カルチャーとして成立しているものです。

そんなカルチャーがなくなってしまうことに対し、思うことが少しでもあれば、この問題に目を向けてみてはいかがでしょうか。

それでは。

生活

Posted by naishybrid