【ラウドシーンのパイオニア】FACTを振り返る!
2015年11月20日
5年前のこの日、あるバンドが、16年の活動に幕を閉じた日です。
6人組ロックバンド
FACT
日本のラウドロックシーンのパイオニアであり、SiMやcoldrain、Fear,and Loathing in Las Vegas等、今やフェスでトリを飾ることが多くなったラウドバンド達も、このバンドがいなかったら、おそらく、いや絶対に立ち位置が異なっていたと感じます。
実際、SiMのボーカルであるMAHさんは、FACTが解散を発表した日にこんなツイートをしていました。
PTPしかり、ホルモン、DA、RIZE、MAD、他にも沢山の先輩がいるけれど。間違いなくFACTが09年に大きく道を切り拓いてくれたからこそ今のラウドシーンがある。解散は残念ですが、それぞれの今後に期待。まだまだ一緒に遊びたい!
— MAH (@MAHfromSiM) April 28, 2015
これほどまでに、FACTというバンドの影響力は大きく、今もなおその影響力は続いております。
正直に言わせてもらいますが、僕はこのバンドが人生で出会ってきた中で一番のめり込むまでの時間が早く、冗談抜きで一番好きなバンドです
それこそ、5年前のこの日に、この目で最後のFACTのライブも見ました。
そのくらいには、FACTのファンであると自称しております。
解散から早くも5年が経とうとしており、だんだんFACTというバンドがいたことも忘れ去られているような気が、自分も含めて感じております。
だからこそ、FACTが終わった今日この日に、今一度FACTについて振り返ると同時に、FACTを知らないという方にも、この記事がきっかけで触れていただければと思い、今回はロックバンド『FACT』について紹介をさせていただきます。
目次
FACTというバンドについて
メンバー
FACTのメンバーは
Hiro(ボーカル)
Kazuki(ギター)
Takahiro(ギター)
Adam(ギターボーカル)
Tomohiro(ベース)
Eiji(ドラム)
この6人からなっていました。
当初は5人のみだったのですが、2012年にそれまでイギリスでライブを行う際のツアーマネージメントを行ってくれていたAdamさんがメンバーに加わり、ツインボーカルに加えトリプルギターという、あまりない編成のバンドとなりました。
そんな6人が放つ音は衝撃的であり、アルバム毎に様々な挑戦をし、現状の立ち位置にとどまらないチャレンジを常に行い続け、それでいてカッコよさが年々増していったという稀有なバンドです。
次の項目からは、FACTがなぜ日本のラウドロックシーンのパイオニアと言われるようになったのか。
その活動を振り返っていきます。
FACTの軌跡
2009年、アルバム『FACT』発売
彼らを語るうえで欠かせないのが、2009年に発表されたセルフタイトルアルバム『FACT』です。
今でこそ珍しいことではなくなりましたが、アメリカでレコーディングを行い、またプロデューサーにINCUBUSやLIMP BIZKIT、STORY OF THE YEAR等のプロデュースを務めた『Michel"Elvis"Baskette』が担当することになりました。
このように、アメリカでレコーディングをし、プロデューサーも海外の人気アーティストのプロデュースをした著名なプロデューサーを持ってきたというのは、日本のアーティストからしてみれば、当時かなり異例なことでした。
さらに、今でこそ世界的バンド『The 1975』を擁する、アメリカでも屈指の老舗レーベルである『Vagrant Records』からCDを出すというのも、当時衝撃的な事であり、今現在でも、Vagrant RecordsからCDを出した日本人アーティストは、FACT以外にいません。
そんな豪華体制でのレコーディングに伴い、日本人だから日本らしさを出そう!ということで提案したのが、ビジュアルに能面を使い、それで顔を隠すということでした。
そのため、FACTといえば、能面。という印象を持っている方も多いことかと思います。
能面をビジュアルに起用した理由は、(今はそこまでではなくなりましたが)海外の人が日本人だからという理由だけで音楽を差別する・下に見るということがありました。
そのように、音を聞く前から差別をされるのが嫌であり、そういう人種の差別を抜きで俺らの音を聞いてほしい。けれど日本人らしさも見せたいというジレンマに対し提案したのが、日本ならではの能面を取り入れるということでした。
そんな彼らの名を一躍知らしめるきっかけとなったのが、このアルバムに入っているリード曲であり、彼らの代表曲となった『a fact of life』です。
日本人とは思えない発音とエレクトロが大量に入ったサウンド。それに加えオートチューンをバリバリに効かせたこの曲は、当時の日本の音楽シーンに圧倒的な衝撃をもたらし、たちまちFACTという名を知らしめることとなりました。
そして発売されたこのアルバムは、日本でも話題となり、その年のタワーレコードJ-PUNK部門でも、並み居る強豪を抑えて1位に輝きました。
まさにここからFACTの快進撃が始まり・・・そうになった矢先、彼らに悲劇が襲いました。
北米ツアーの最中、カナダに向かう道中で、機材車が事故に遭い、メンバー全員が怪我をし、ドラムのEijiさんは一時予断を許さない状況になるほどのとんでもない事故が起こったのです。
幸い、Eijiさんも一命は取り留め、メンバーはどなたも無事でしたが、その後のツアーは全てキャンセルとなりました。
そんな事故からの復帰一発目のライブが、これまた彼らの軌跡を語る上で欠かせない出来事となります。
海外フェスで急遽メインステージへ。ブーイングからの歓声へ
復帰一発目となったFACTのライブは、日本ではなくまさかの海外。
イギリス・ロンドンにて行われたフェスティバル『SONISPHERE FESTIVAL 2009』でした。
2日間あるうちの1日目の方に出演したのですが、その日はヘッドライナーにLINKIN PARK。サブステージにはBullet For My ValentineやTHE USED。さらに2日目の方はMETALLICAがヘッドライナーを飾るなど、錚々たるラインナップが集まる中で唯一、日本人バンドとして出演することになりました。
当初は、4つあるうちの3番目に大きいステージに出演する予定だったのですが、その日メインステージに出演するはずだったバンド『Coheed and Cambria』が当日に出演キャンセルになり、その代打としてFACTが急遽メインステージに立つことになったのです。
しかし、当然快く受け入れられる・・・はずもなく、Coheed and Cambriaを楽しみにしていたのに、いきなりわけのわからない日本人バンドが出てきたことによって、演奏序盤は客席からステージに向けて大量のペットボトルが投げ込まれるという、ブーイングというよりも半ば暴動に近いような状況でした。
ですが、演奏を続けていくうちにだんだん投げ込まれるペットボトルの量が減っていき、最後の曲を演奏している頃には手拍子も起こるようになり、ライブが終わった瞬間には大歓声が起きたこのライブは、彼らの音がイギリスの人々に認められた瞬間、いや事実でもありました。
SUMMER SONICのオープニングアクトで最大動員人数を樹立
そんなSONISPHERE FESTIVALでの大健闘を終えたFACTが、アルバム『FACT』を発売してからの日本初ライブは『SUMMER SONIC 2009』のオープニングアクトとしての出演でした。
7つあるステージの2番目に大きい『MOUNTAIN STAGE』のオープニングアクトとして出演し、ステージがある幕張メッセの1ホール(COUNTDOWN JAPANのEARTH STAGEがある場所と言えばわかりやすいかと思います。)には、FACTのステージを一目見るために朝から満員御礼。あのマウンテンステージがぱんぱんになるほどのお客さんでごった返しました。
結果として、SUMMER SONIC史上、オープニングアクトの過去最大動員記録を大幅に塗り替えることとなり、これは11年が経った現在でも未だ破られることのない大記録となっています。
と、ここまで僕が記してきたことは、実は映像化されており、彼らの活動を追ったドキュメンタリー『a life of fact』として、FACT公式YouTubeチャンネルに上がっており、現在も見ることが出来ます。
なお、このドキュメンタリーは全7編に分けられているのですが、最後の7つ目は、これが公開された6年前に、期間限定として7つ目が公開されておりました。
そのため、最後の7つ目にどんな映像が収録されているのか気になる!という方は、彼らの出したDVD『001』をぜひ買ってみてください。
15周年記念イベント『ROCK-O-RAMA』が色々と凄すぎた!
先ほど紹介した動画の冒頭にある『2014.11.29(土)』という日付の後の画像は、彼らが結成15周年を迎えた2014年に幕張メッセで行ったイベント『ROCK-O-RAMA』のフライヤーです。
このイベントに僕も参加していたのですが・・・とにかく、FACTらしさが全開に溢れたイベントでした。
ラインナップには、FACTが尊敬してやまないHi-STANDARDの横山健さんと難波彰浩さんがいるKen Yokoyama・NAMBA69。
今でこそ超人気バンドになりましたが、当時まだ全然名前が知られていなかった04 Limited Sazabys・Crystal Lake・NOISEMAKER・SPARK!!SOUND!!SHOW!!。
Cleave・PALM・waterweed・ENDZWECK等の、それこそ、フェスにほぼ全く呼ばれることがないような、いわゆるアンダーグラウンドにいるようなバンドたちがかなりラインナップされており、事実このイベントが幕張メッセで初めてやるというようバンドも多かったそうです。
さらにそれだけでなく、FACTが影響を受けたアメリカのパンクバンド、STRUNG OUTも呼ぶなど、とにかく他とは一線を画すこのフェスは本当に衝撃的でした。
と、ラインナップだけでも十分際物感のあるフェスですが、それだけでなく、なんと来場者記念として6種類あるTシャツの内から1枚をプレゼントするというサービスまでありました。
Tシャツを無料配布した理由として、当時語っていた理由が、若い子がお金なくてTシャツ1枚買って後何も買えないなら、俺らがTシャツをあげるからそのお金で何か食べたり他の物にお金を使ってほしい。という理由でした。
これだけでも、FACTの人間性を感じられる企画した。
さらにそれだけでなく、ブース展開されていたアパレルブランド『VOLCOM』ブースでは、無料でキャップが配られる(!?)など、こちらが不安に思えるほど、大盤振る舞いなサービスをしていました。
正直、ファンとして集客などある意味そっちのけで、FACTが自身のルーツであるバンドを呼びつつ、アンダーグラウンドにいるバンドやこれから来る若手バンド。
そしてFACTに関わるブランドも集結するなど、とにかく誰にもできない、唯一無二なイベントでした。
そんな、常に前例のない、前人未到のことをやり続けていたFACTは、このROCK-O-RAMAから5か月後、突如として解散を発表しました。
ラストライブはライブハウスサーキットイベント!
彼らのラストライブは、Shibuya O-EAST(現TSUTAYA O-EAST)・duo MUSIC EXCHANGE・club asiaの3箇所を使って行われたサーキットイベント『ROCK-O-RAMA 2015』でした。
Ken Yokoyamaやwaterweed、Crystal Lake等去年から引き続き出演したバンドや、CrossfaithやMAN WITH A MISSON、HEY-SMITHやCOUNTRY YARDやLITEなど、これが最初で最後の参加となったバンドも数多くいました。
そしてこの日のトリとして、O-EASTでラストライブが行われたのですが、あんなにパンパンなO-EASTは最初で最後であり、同時にこの日の出演者も多数登場するなど、悲しくもあり、同時にド派手なライブでした。
この日のライブは、DVD『002』に収録されており、ラストライブの模様だけでなく、ドキュメンタリーやアルバムに付けられていたライブDVDに収録されていなかったアンコール部分も見ることが出来ます。
解散の理由は?
FACTが解散をした理由は、本人たちの口からすでに語られています。
その理由とは
今が一番かっこいいから
これが理由です。
これは本人たちが、最後に発売したベストアルバムのインタビューにおいて自身の口から語っております。
そのため、FACTが解散した理由は不仲?金銭問題?とか煽っているブログは、ことごとくウソであり、彼らが語る言葉を全く見ていないんだな。と思ってください。
現在の彼らの活動
現在、ボーカルのHiroさんとギターのKazukiさん・Takahiroさんは新バンド『SHADOWS』として活動をしており、すでにライブハウスシーンにおいても確固たる地位を築いております。
Adamさんは現在、『Joy Opposites』というバンドとして活動をされており、イギリス出身ならではの音楽的感覚を活かし、日本ではあまりいないようなオルタナティブでありつつポストロックの雰囲気も感じられる、唯一無二のバンドをされております。
当初、Joy Oppositesには、EijiさんとTomohiroさんも在籍されていたのですが、2018年に方向性の違いによりお二方は脱退されました。
その後、EijiさんはかねてよりFACTと親交があったバンド、『Ken Yokoyama』のドラムとして加わりました。
また、Ken Yokoyama加入に合わせ、EijiからEKKUNに名義が変わりました。
すでにツアーはもちろん、ミニアルバムも発売しており、先日にはKen Yokoyamaとして7枚目のフルアルバム『4Wheels 9Lives』も発売するなど、Ken Yokoyamaというバンドの一員として大車輪のごとく活躍している為、今後のKen Yokoyamaからも目が離せません!
Tomohiroさんは現在表立った活動はされていないですが、またいつかベースを弾いている姿をライブハウスで見れる日を楽しみにしております!
FACTが残した"事実"
FACTを聞いていたと語った人
ここまでざっとFACTというバンドについて紹介してきましたが、このバンドは本当に、FACT以前・FACT以降と称してもおかしくはないほど、エポックメイキングな存在でした。
その音にやられたファンは各界隈に様々おり、同じバンド仲間では、彼らの尊敬しているHi-STANDARDの横山健さんや難波章浩さんはもちろん、MAN WITH A MISSONやSiMやcoldrain、CrossfaithやHEY-SMITH。
亡くなられたPay money To my PainのボーカルであったKさんも、FACTが大好きでした。
それ以外にも、Crystal LakeやNOISEMAKER、HER NAME IN BLOOD等、若いバンドからもリスペクトされる存在であり、ツアーにも当時呼んでおりましたが、そこから何年も経ち、ここまで人気のバンドになっているのはFACTとしても嬉しいところだと思います。
また、RIZE/The BONEZで活躍するJESSEさんもFACTが大好きであり、先程紹介したROCK-O-RAMA 2015にも、The BONEZが出演していました。
その前日に、彼らへの想いを語った動画を上げており、解散発表される前に初めて出会い、その音を聞いた瞬間にtickやPTP(Pay money To my Pain)と会った時と似たような衝撃を受けたと語っていました。
そして、当時まだ未発表曲であった『Friends』についても触れ、どこかで俺はHiroのことも考えていたかもしれないと語っていたため、未だに僕はこの曲を聞くとFACTのことを思い出します。
音楽以外の著名人の方にもファンが多く、先程紹介したapeのPVは、CGアーティストの『森田悠揮さん』と映像のディレクター『斉藤裕太さん』がタッグを組んで撮影されたのですが、理由はお互いFACTが好きだったからという理由です。
さらに、声優業界でも『大橋彩香さん』・『佐藤聡美さん』・『千葉翔也さん』といった有名な声優の方々も、ブログやTwitter、インタビュー等でFACTを聞いていることを書いておりました。
本当に業界問わずファンがおり、未だにこのバンドの影響力は凄まじいと感じます。
僕のFACTへの想い
そして解散から本日でちょうど5年が経ち、最初はまたいつか会えるよと思っていましたが、時が経つにつれて、どんどんその希望が薄くなっていると自分でも感じてしまっています。
もちろん、今のFACTのメンバーがそれぞれ充実した活動をしているならばそこに対してこちらは何の文句も言いません。
ただ、もし願いが叶うのならば、1回だけでもいいから1番かっこよかった瞬間を更新してほしいと願うばかりなのです。
果たしてそれがこれから先生きている内にあるのかどうかは分かりませんが、ただ、それでもやはり、もう一度あの6人がステージに立つ日が来るのを待っている僕がずーっといるんです。
ぜひ皆さんも、今日くらいは、FACTを思い出してみて、彼らの残した音楽という『事実』を聞いてみてはいかがでしょうか?
それでは!
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